蒸かすだけ
「お前ら、こんなとこで雁首揃えて何やってんだ?飯の準備が出来てるぜ。」
「戻りました、ジャックさん。」
「おう、お帰り。フリードもよく来たな。」
「やぁ、ジャック。約束通り来たよ。」
拠点の入り口で話をしていると、ジャックさんが出迎えに来る。
ジャックさんは親し気にフリードを歓迎するが、
「それよりも聞いてくれ!ワーズギーが僕からの援助物資を捨てようとしていたんだ!君からも言ってやってくれないか!」
「つってもよぉ、街の連中だって皆食うのを嫌がってるじゃねぇか。それにこれだって貴族連中に食わせようとして断られたのを渡してきたんだろ。」
「それは連中が愚かにも先入観と思考停止によって口にしようとしないからだ。」
先程の怒りが再燃したのか、ワーズギーを指差してジャックさんに訴えかける。
ワーズギーもそれに反論するが、フリードはそれを一蹴する。
「まぁオレは食えるんなら何でも良いけどよ。食糧を融通してくれんのはありがてぇが、オレもどうかって思う所がねぇって訳じゃねぇぜ。」
「ジャック!君まで愚者共と同じような事を言うんじゃないだろうね?」
「そうじゃなくてよ………」
ジャックさんは腕を組んで悩まし気に思う所があると語る。
それに対してフリードは更に怒りを露わにするが、ジャックさんは彼を宥める、諭すように語り始める。
「多過ぎるんだよ。融通してもらう量が。」
「毎日食べる事に困らない程度には送っているけど、多過ぎるかい?」
「あぁ、こいつらがあんまり食おうとしねぇってものあるが、それを差し引いても食いきれねぇよ。」
「一日三食で使用しても?」
「それが多過ぎるって言ってんだよ!三食、全部、蒸かした芋なんて、飽きるっての!」
「でも栄養なら十分じゃないか。」
「そう言う事じゃねぇんだよ!」
なるほど、そう言う事か。
うん、確かに毎日三食蒸かし芋はキツい。
食事という物は栄養を摂取出来ればそれで良い訳では無いだろう。
しかし、なにも蒸かすだけがジャガイモの調理方法じゃないだろう。
「あの、そもそも料理したりはしないんですか?」
「出来ねぇ!」
「胸を張って言う事じゃ無いだろう。」
「正確に言えば、ここの連中は見た事無い食材だからな。誰もどう料理すれば良いか分からねぇんだよ。だからジャガイモを貰った時に聞いた調理方法で蒸かすっつー手段を取ってんだ。」
そう言う事だったのか。
確かに見た事も無い食材だと、どう調理すれば良いか分からないのも無理はない。
それなら………
「俺もそこまで料理が上手って訳じゃないですけど、一応ジャガイモを使った料理を作れますよ。」
「マジか!?」
「はい。ただ、ここにどんな調味料があるか分からないので俺がいた国の調理方法がそのまま使えるかは分かりませんが。」
「それでもかまわねぇ!頼んだぜ、リョータ!」
今までお世話になりっぱなしだし、ここで少しは役に立たないとな。
ポテトサラダとかポテトフライみたいな料理なら、たぶん作れるはず。