家畜の餌?異端?いいえ、ジャガイモです。
フリード、アニエスと共に『差し伸べる手』の拠点に戻ると、仲間の一人が何かを運んでいる。
ジャックさんと共に乗って来た馬車の荷物は粗方運び終わったはずだが………
「おや、ワーズギーじゃないか。見覚えのある箱だけど、一体何を運んでいるんだい?」
「げぇ!?フリード!?」
「後ろめたそうな表情をしているけれど、何か問題でもあったのかな?」
「い、いや、何でもねぇ!そんな事よりもジャックが待ってるぜ!早く行ってやんな!」
「そうだね。箱の中身を改めさせてもらってからね。」
ワーズギーと呼ばれた男はフリードに声を掛けられると、慌ててジャックさんの下へ行くように促す。
まるで見られてはマズい瞬間を見られたかのような慌てぶりだ。
フリードはそれを訝しみ、箱の中身を確認する。
その表情は次第に険しくなっていき、フリードはワーズギーに詰め寄るのであった。
「………さて、申し開きはあるかな?」
「いや、だってよぉ。」
「だってじゃないよ。君たちは僕の話よりも、勝手な迷信を信じるのかい?」
「言い訳を聞いといて遮らないでくれよ。」
ワーズギーが言い訳をしようとした瞬間にフリードは更に詰め寄る。
せめてもう少し位、話を聞いてやれよ。
「こっちの連中は皆、『家畜の餌だ』とか、『人間が食うもんじゃない』って言ってるしよ、教会の連中に至っちゃ『異端』扱いだぜ?異端はやべぇよ。」
「それこそがくだらない勝手で愚かな迷信って言ってるんだよ。」
「あれ、それって………。」
先程から何の話をしているのか気になり、俺もワーズギーの運んでいた箱の中身を覗いてみる。
「リョータ、君まで馬鹿げた事を言い出すんじゃないだろうね。もしそうならば少しばかり、いやとても失望したよ。」
「ジャガイモじゃん。『家畜の餌』とか『異端』ってどういう事だ?」
「なんだよ新入り。お前、これを知ってんのか?」
ジャガイモだった。
あまりにも見知った食材の登場で驚いたが、それ以上に家畜の餌とか異端って扱いをされている事の方が驚きだ。
「俺のいた国じゃ一般的に普及してて、食べた事が無いって奴の方が少ないくらいだ。」
「えぇ………お前の国、家畜の餌食うのかよ。」
「だからそもそも家畜の餌でも異端でも無いって言っているだろう。」
「強いて言うなら芽が出た奴はヤバいから食べない方が良いけどな。」
「やっぱり人間が食ったらヤバいんじゃねぇか!」
「彼は芽が出た物は、と言っただろう。他人の話はしっかり聞く事だね。」
ワーズギーは信じられないといった表情でこちらを見るが、むしろこちらの方が信じられないと言いたいくらいだ。