一人の信徒として歓迎いたしましょう
「アンジェロさん、なんでここに?王都の教会に居たんじゃ?」
「なるほど、その事ですか。いえ、私は本来こちらの教会におりましてね。王都へは用事があったので一時的に滞在していただけなのですよ。」
「そうだったんですか……」
王都の教会に所属する人だと思っていたが、実際の所は違ったようだ。
しかし、偶然にもアニエスと同じようなタイミングでルーメンから王都に出向いていたのか……
「どうしたリョータ、知り合いか?」
「あ、あぁ、この人はアンジェロさん。この前王都の教会で出会った人だ。」
「へぇ、ちょうどアニーがルーメンから王都の教会に来てた時に、偶然同じくルーメンから王都の教会に来てたってか……偶然、なぁ。」
「でもアンジェロさんに聞いてみたけど、彼はアニエスの事は名前を耳にした事がある程度の関係らしいぞ。」
「あの…………いえ、何でもありません。」
アンジェロの事を紹介すると、偶然の積み重ねからモルダがアニエスに関して何か知っているのではないか、関りがあるのではないかと訝しむ。
確かに状況を鑑みると関りがあってもおかしくはなさそうだが、本人が詳しくは知らない以上、追及は出来ない。
それに以前、親切にしてもらっていながら疑うような真似はしたくはない。
僅かに抱きそうになった疑念を振り払っている一方で、ディーゴが何かを言おうとするも口を噤む。
「どうしんだ、ディーゴ?今何か言おうとしてなかったか?」
「いえ、今話す事ではなさそうなので気にしないで下さい。」
「そうなのか?まぁそう言うなら聞かないでおくけど……」
気になって何を言おうとしていたのかディーゴに尋ねるが、彼は語ろうとしない。
無理に聞き出すような状況でもないし、いったんこの話は置いておく。
「それで、リョータさんは何故こちらに?」
「えーと俺は転生者が助け合う組織のリーダー代理に就いてて、それで関りのあったディーゴ商会に挨拶に来たんだ。」
「で、せっかくだからついでに大聖堂に行ってみようって話になってな。」
「ルーメンに来たのであれば一度は訪れておいて損は無いと案内させて頂きました。」
「なるほど、そういう事だったのですね。ようこそお出で下さいました。一人の信徒として歓迎いたしましょう。」
大聖堂に来た理由をアンジェロに話すと恭しくお辞儀をして俺たちを迎え入れてくれる。
そこまで丁寧に接してもらうような身では無いが、歓迎はありがたく受け取り、俺たちは改めて大聖堂の中に足を踏み入れた。