どっかに土産物でも売ってねぇかな
「しかし、改めて見てみるとデッカいなぁ……」
「ウハヤエ教の本拠地ですし、この街一番の名所ですからね。」
「王都の教会も凄かったけど、こっちもめちゃくちゃ豪華って言うか、存在感があるって言うか……」
ディーゴと共に俺たちは大聖堂に向かう。
街に到着した時も入口から見える程の威容と存在感を放っていたが、改めて近くに来て見てみるとより一層それを感じさせる。
権威の象徴の様に、しかし威圧感がある訳では無く、絶妙なバランスで大聖堂は成り立っていた。
大聖堂の入口に至るまでの道は赤いレンガで舗装され、色とりどりの花が植えられた花壇がその両脇を固め、街並みの色合いとよく似た白い壁面にはよく見ると細かな模様が彫刻されていた。
大きな正面扉は開け放たれており、来る者を拒まず受け入れるようだ。
そしてそこからは僅かにオルガンらしき音色が聞こえてきて、聖歌を奏でているのだろうと思われる。
人通りも混雑とまではいっていないが、行き来する人々の姿が多数見られ、大聖堂内部ではこの街の住人や巡礼者と思われる人々が祈りを捧げている。
ステンドグラスから差し込む光に照らされた彼らは、敬虔で神聖な信徒の様に、美しい宗教画のように見えた。
「すっげぇ…………あ、どっかに土産物でも売ってねぇかな……」
「無いだろ。と言うか観光に来たんじゃないってさっきも言ったよな。」
「まぁまぁ、初めてこの大聖堂を見たら感動すると思うので。それに街の方にはこの大聖堂を描いた絵を取り扱っている店もあるので、もしも良ければそちらで一枚購入すれば良いかと。」
「拠点の事をとか活動を皆に任せてこっちに来てるんだから、それくらい買って帰っても良いだろ?」
「……一枚だけだぞ。」
「やったぜ!さっすがリョータ、話が分かる!リビングに飾ろうぜ!」
一方のモルダは神聖さの欠片も無い俗っぽい発言で俺を一気に現実に引き戻す。
大聖堂に足を踏み入れた時の感動を返してほしい。
とは言え、彼の言う事にも一理ある、のか?
ラディウムの時もそうだったし、拠点を開けている間の管理や活動を皆に任せてしまっている以上、何かしらの手土産の一つでもあった方が良いのかも知れない。
ディーゴの仲介もあってお土産を買って帰る事には妥協する。
やれやれと言った気持ちになりながらも、俺たちは大聖堂の内部に足を踏み入れるが……
「おや、これはこれはリョータ殿ではありませんか。」
「え?ア、アンジェロさん!?」
「王都の教会以来ですね。」
僅かに聞き覚えのある声を掛けられ、そちらを振り向く。
そこには以前王都の教会で出会った老神父立っていた。
どうやら先程まで花壇に水をやっていたようでじょうろを持っているが、王都に居た彼が何故ここに居るのだろうか?