代理の商会長
「ディーゴ!久しぶりだな!元気か?」
「あぁ、健康には何ら問題無いですよ。それよりも、共和国騒動の時は大変だったようですね。」
「おう、それで色々とあって挨拶に来たんだよ。」
「挨拶?」
「初めまして。俺はユーキ・リョータ、『差し伸べる手』のリーダー代理を務めてます。」
「リーダー代理……ジャックは、彼はどうなったのですか?」
「実は……」
俺が挨拶をすると、ディーゴは何かを察したように表情に陰りを見せ、ジャックが今どうしているのかを尋ねる。
共和国騒動の時の出来事、大きな傷を負って今は南方で療養している事、その間の『差し伸べる手』のリーダーを任された事などを彼に説明する。
その説明を彼は何も言わず聞き続け、ただ時折相槌を打って反応を示すのであった。
「そう、ですか……。分かりました。改めて、ボクはディーゴ・コロンと申します。あなた方の情報網にはお世話になっていました。今度ともよろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
「こっちも商売絡みで世話になってたしな。」
「それと、そちらの貴女は……」
「あ、は、初めまして……わ、私は『ネーシア商会』のナーヤと、も、申します……」
「『ネーシア商会』!無事だったのですね!こちらからご挨拶に伺えず申し訳ない。何分共和国騒動の影響で慌ただしかったものでして……」
「そ、そんな、とんでもないです……!そ、それで、そのぉ、今回はご挨拶と、しょ、商品の仕入れを……」
「なるほど。誰か!手の空いている人はいますか?」
「お呼びでしょうか?」
「彼女をエウリア産の商品が置いてある棟へ案内して下さい。」
「承知しました。こちらへどうぞ。」
「あ、ありがとうございますぅ……」
俺とディーゴは握手を交わし、友好の意を示す。
ジャックたちが良好な関係を築いていてくれたおかげで、話はスムーズに進みそうだ。
一方のナーヤも軽く挨拶をして目的を話すと、ディーゴが呼びつけた使用人に連れられて仕入れる商品を品定めしに行った。
「それにしても代理、ですか。ボクと似ていますね……。」
「その様子じゃ、まだ見つかってないのか。」
「えぇ……。」
「似てるって?」
ディーゴがナーヤを見送ったのち、こちらに向き直って悲しみと仲間意識が混同したような表情で何かを呟く。
「ボクも、代理の商会長のようなものですから……」
「代理って言っても、商会の名前だって『ディーゴ商会』だし、ディーゴ会長の商会じゃないんですか?」
「いえ……そもそも以前はボクの名前を冠した商会ではなかったのです。ですので、そのように畏まった姿勢で接して頂かずとも、モルダのように楽にして頂いて構いません。」
何が似ているのかを尋ねると、彼もまた俺と同じく代理として組織のトップに立っている人間であると言う事だった。
商会名からして彼が作り上げた組織だと思っていたが、実際には違っていたようだ。
しかし何故、彼は代理の商会長になったのだろうか……?