確かにおっかなびっくりって感じで
「ほら、こいつだ。使いな。」
ネーシアに連れられて店の裏手にある馬車まで案内される。
そこには幌の付いたしっかりした造りの馬車があった。
「それと、ナーヤ!」
「は、はいぃ!」
「あんた、この子たちに付いてって仕入れる品を選んできな。このリストに書いておいた分類の者を中心に頼むよ。」
「は、はい。わ、分かりました。」
ネーシアは店の方へ向き直って誰かを呼びつけると、すぐさま小柄で細身な女性が飛び出してくる。
彼女はネーシアのテキパキとした指示に何度も首を縦に振って頷く。
「ネーシアさん、この人は?」
「うちの店員だよ。おどおどしててまだ未熟だけど、それなりに目端は利く。経験も積ませたいし、連れってっておくれ。」
「ナ、ナーヤと申します。よ、よろしくお願いします……」
「おう、よろしくな!」
ナーヤと名乗った女性は仕入れも兼ねたルーメン行きに同行する様で、軽く自己紹介を済ませる。
自信なさげな雰囲気で俯きながら話をしていたが、大丈夫なのだろうか。
その様子に僅かに心配を感じながらもネーシアには馬車を借りる都合もあるし、一人の人間としても無下には出来ない。
もしもルーメンで困った事があれば手を貸そう。
「そ、それでは行ってきます。」
「気を付けて行ってくるんだよ!」
その後、ネーシアに見送られて馬車を走らせる。
モルダは手綱を引き、俺とナーヤは荷車の中で腰かけて道を往く。
「そう言えばナーヤさんはルーメンに行った事はあるんですか?」
「い、いえ、マスカから出た事が無いので……あと、その、わ、私なんかの事はそのように丁寧に扱って頂かなくても……」
「なんかって……」
「て、店長と比べて全然仕事が出来ませんし、は、話をするのも苦手ですし……」
「確かにおっかなびっくりって感じで頼りにはならなさそうだな。」
「うぅ……そうなんです……」
「モルダ、もう少しオブラートに……」
道中に雑談を交わしながら進んで行く。
ナーヤのネガティブな自己評価に絶句するが、モルダはそれに同意する。
確かにそう思わない事も無いけれど、それを素直に伝えては傷付くだろう。
俺はモルダを嗜めようと口を開くが、
「でもよ、要するにまだ伸びしろがあるって事だろ。」
「モルダ、良い事言った!誰だって最初から出来る訳じゃないからな。」
「あ、ありがとうございますぅ……」
直後に彼はマイナスをプラスに転じさせる意見を述べる。
そう、これから成長していけばいいのだ。
俺もそれに同調してナーヤを励ます。
それを聞いた彼女は少し恥ずかしそうに俯いて小さく感謝の言葉を述べた。
「もしも何か困った事があったら話くらい聞くからさ。自分のペースで頑張ろう。」
「世の中持ちつ持たれつだからな。」
「は、はいぃ……」
今はこうしておどおどとしているが、いつかはきっと立派に成長するのだろう。
そして今度は周りを支えたり助けたりするようになってほしいものだ。