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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
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そもそも罪の事を問うのであれば

「次期国王を、仮に何らかの形で運命の歯車がズレて次期国王になっていなくともラディウム公の親族をかどわかした罪は重い。」


ユーステッドは事実を告げる。

その事実はとても重く、否定の仕様が無いものだ。

しかし、


「罪がある事は重々承知の上ですが、彼女に悪意はなく、むしろアルステッド様を慮っての行いなのです。情状酌量の余地はあると思われます。」


それが説得を諦める理由にはならない。

何としても説き伏せなくてはならない。

事が事だけに死罪の可能性すらあるのだ。

それだけは絶対に避けなくては……!


「無論、無罪放免にしてほしいとは言いません。罪には罰を以て遇するのが道理です。しかし彼女はこれまでにも現地民に不満を抱いていた転生者を宥め、事態が悪化する事を防いでいた功があります。」


全てを許せと言うつもりは無い。

グランマは罪を認めて罰を受け入れるだろうけれど、俺は、俺たちはそれでグランマが死んでしまう事は受け入れられない。

一つでも多くの説得に繋がるであろう言葉を紡いでいくが……


「ふっ、分かっている。そもそも罪の事を問うのであれば、海賊を組織して活動していた叔父上も、独断専行でラディウムを乱した父上も、そんな父上を止める事が出来なかったオレや臣下たちも、いずれも罪を問わなくてはならん。しかし全員を厳格に裁いていてはラディウム領は立ちいかねぇ。かと言って罪を裁かねぇのも問題だ。」


表情を和らげたユーステッドは穏やかな声色で語り掛ける。


「だから、オレが新しくラディウム公爵の位に就いたって理由の恩赦で全員の罪を軽くする!臣下たちはしばらくの間は減給、オレも生活を公爵としての水準より下げて暮らす。叔父上とマデリンは、まぁ流石に少しの間牢に入ってもらう事とする。父上は……今回の件で公位を退いた。それで決着だ。」


途中から口調が崩れ、マークにじろりと見られるが、彼はそれを気にせずに話を続ける。

人々の処遇は軽く、心配していたような事態にもなりそうにない。

前ラディウム公の事を話す際には僅かに表情に陰りを見せたが、それでも彼もまた、穏当な形での結末を望んでいたようで俺はホッと胸を撫で下ろした。


「リョータはラディウムから帰っちまうだろうけど、見ていてくれ、いや、人伝にでも聞いていてくれ。ラディウムが良くなっていく話を。正直、オレには公爵としての覚悟も無ければ政治の知識もねぇ。だけど、周りの意見を聞いてラディウムを発展させてみせる。人々が暮らしやすい領を作ってみせる。」


彼は覚悟は無いと言ってこそいるが、周囲と協力して先へと進んで行く姿勢、人々を思いやる姿勢には、為政者として覚悟を抱くには十分な荷を背負っている事を自覚していると感じさせられる。

彼ならばきっと、ラディッツをより良い方向へと導いていける事だろう。


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