表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
207/247

幕間:ラディウム公 前編

二十年前……


「聞いてくれ!ランドルフ!」

「なんだよ兄貴、やけに嬉しそうじゃねぇか。」

「あぁ!私は運命の出会いを果たした!」

「運命?」

「そうだ!あれは先程、街の視察に出向いていた時の事だった……」

「また視察かよ……ってかそれだったら部下の一人でも連れて行けっていつも言ってるだろう。」


ラディウム城の執務室で書類仕事をしていたランドルフの下にラディウム公が訪れる。

その表情は喜色満面と言った様で、ランドルフがペンを置いて若干呆れつつも兄の話に耳を傾ける。






ラディウム公がジュテームの街に出て視察をしていると路地から何やら声が聞こえてきた。


「いい加減にして下さい!」

「なんだよ、ちょっとくらい良いじゃねぇか。」

「そうだよ、オレたちと遊ぼうぜ?」

「止めてって言ってるでしょ!」


何事かと思い覗いてみると、そこには二人の男と一人の女がいた。

男たちはニヤニヤと軽薄な笑みを浮かべながら女に言い寄り、対する女は逃げ道を塞がれて大声を上げる事しか出来ない。


「そこで何をしている?」

「あ?なんだよ、邪魔すんなや。」

「ま、待て、あの人は……」

「んん……?あ……い、いやぁお見苦しいところお見せしやした!」

「へへへ、それじゃあオレらはこれで!」


様子を見ていたラディウム公が声を掛けると男は威嚇するように睨みつけながら振り向くが、もう片方の男は眼前にいる人物が誰かを即座に把握して相方を制止する。

それによって威嚇していた男もラディウム公の顔をよく見る事で誰を相手にしていたか把握し、即座に手の平を返して相方と共に脱兎の如く逃げ去っていった。


「まったく、治安維持にもう少し人員を割くべきか……」

「あの、ありがとうございます!」

「構わな、い……」

「わたし、そこの通りの突き当りにある花屋で働いているので、来てくれたらお礼にサービスしますね!」

「あ、あぁ……」

「それでは、今は急いでいるので失礼します!本当にありがとうございました!」

「…………」


軽く溜め息を吐いて人員配置に思考を回していたラディウム公に言い寄られていた女は感謝の言葉を告げる。

それを受け取った彼は女の方をよく見ると固まり、言葉に詰まった。

その間にも女は謝意を伝えて足早に去っていく。


「可憐だ……」


そこに残されたのは彼女に見惚れたラディウム公のみだった。






「と言う事があったのだ!あの美しさ!お前にも見せてやりたいくらいだったぞ!」

「要するに一目惚れって事か。」

「何か文句でもあるのか?この運命の出会いに!口を挟むと言うのか!」

「いや、オレは気にしねぇけどよ、臣下の連中がどんな反応をするかは予想が付くぜ。やれ『家格が~』だの、『他家との結びつきが~』だの、七面倒臭い事を言い出すだろうよ。」

「それがどうした!そのような事は些末事だ!そもそも初代様とて身元も明らかではない転生者にも関わらず、才覚を示し、当時の国王陛下から寵愛を受けてこのラディウムを治めるに至ったのだ!私は決めたぞ!必ずや彼女を妻に迎え入れると!」

「随分話が飛躍してるなぁ……。まぁ、精々空回りしねぇようにするんこった。」


熱烈な語り口でランドルフに力説するラディウム公。

そんな彼に呆れを隠さずにいる弟は、再びペンを手に取って執務を再開するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ