一体どこに隠れてたんだ?
「……って事があってさ。」
「そんな訳で世話になるよ。」
「あぁ、それは良いんだが……」
「グランマが無事で良かったよー。」
「でもどうしていなくなったりしたのー?」
拠点に帰り、帰還を待っていた仲間たちに今までにあった事を共有する。
皆もグランマの姿を目にしてホッとしたように彼女の周りに近寄り話しかける。
「広めた噂を本人に否定されないように、それとアルステッドが王様になる前に少しくらい世間を見せてやるためにね。」
「皆、心配してた。」
「悪かったとは思ってるよ。」
「ディヴェラにいたって言ってたけど、全然見当たらなかったぞ。一体どこに隠れてたんだ?」
俺がディヴェラを中心にグランマたちを探して周ったものの、彼女らの姿を目にする事は終ぞ無かったのだ。
常にディヴェラにいた訳でこそ無いが、ラッセルや住民たちに話を聞いて情報収集をしてはいた。
それでも痕跡の一つとして見当たらなかったのだから不思議で仕方がない。
「ラッセルに口止めと隠れ場所、食料を用意してもらったのさ。そこでちょっとばかり貧しい人々の生活を体験してもらったり、人々の営みってやつを遠くから見させてもらったのさ。本当なら実際に転生者じゃない方の市井の生活を送らせたかったんだが、あくまでも次期国王になる為の準備で城に籠っているって事にしときたかったからね。」
頼りにしていたラッセルがグルだったとなれば見つからないはずだ。
その彼も村からは若干離れた場所に居を構えている訳だし、住民たちが何も知らなくても無理もない。
「まぁ積もる話は後にして、食事でも作ろうじゃないか。」
「なんでフリードが仕切ってるんだよ。」
「でもさんせー!」
「グランマも帰って来たし、ちょっと豪華にしちゃおー!」
「オレはその間に空けていた拠点の掃除でもするか。」
フリードの仕切り、もとい提案で各々は料理や掃除と言った家事に取り掛かる。
グランマが帰って来たことで、なんだか賑やかな日常が戻って来たような気持ちになれた。
しかし、時は常に移ろい続ける。
「グランマ、少し良いか?」
「どうしたんだい?」
ラディウムの支配者は代替わりする事になり、少なからぬ変化がもうすぐ起きる。
人々の生活が全く変わらないと言う事は無いだろう。
混乱が生じる可能性だって十分にある。
帰路の中でフリードと話してからずっと考えていた。
ラディウムの為に何が出来るのかを。
「ユーステッドに力を貸してやってほしいんだ。」
そして脳裏を過った一つの考えに基づいて、彼女に協力を要請した。