ディヴェラ
「次期国王陛下が行方不明にも関わらず、諸侯に伝え頼る事もせず、あまつさえ隠し続けようとしたのですね?これはどういう了見ですか、ラディウム公。」
「このような重大事を軽々しく口外できるものか!この件は慎重に対応する必要があった。故に無用な混乱や波乱を生まぬために私は秘匿する事を選択したまでだ。悪逆なる大罪人が除かれ、ようやくウラッセア王国が落ち着かんとしている時に新たに火種を蒔く行いをするなど、それこそ非難される所業だ。」
フリードは表情こそ微笑みを浮かべているが、その声色は冷たく詰問するようにラディウム公へと問いかける。
一方のラディウム公は悪びれる様子もなく、さも当然と言わんばかりの態度でそれに答え、自身の判断こそ正しい選択であったと語る。
そしてフリードから視線を外し、
「そのような事よりもだ!ランドルフ!アルステッドをどこに隠している!」
「隠しちゃいねぇよ。落ち着けって言ってんだろう。」
落ち着いた態度を一変させて再びランドルフを睨みつけ、声を荒げてアルステッドの居場所を問う。
「ディヴェラだよ、ディヴェラ。」
「ディヴェラだと!?あの賊徒共の巣窟にアルステッドがいるだと!?愚弟め、やはり貴様」
「いい加減にしやがれ!馬鹿兄貴!転生者を優遇して、もともと住んでた連中を軽んじて、あまつさえ賊徒だと?誰のせいでこうなってると思ってやがるんだ!」
「賊徒は賊徒だ!海賊に身をやつすような者どもなど賊徒呼ばわりで十分だろう!それにだ!私は前から貴様が怪しいと思っていたのだ!ただの平民がこうもしぶとく活動するなどあり得ぬのだからな!」
ランドルフの口から語られたアルステッドの居場所。
それはディヴェラと言うまさかの場所だった。
俺が彼を捜索するにあたって中心地とした場所だったが、姿は一切見えなかった。
家々を一軒一軒探していったわけでは無いが、それでも新しい住民の噂なんて聞かなかったし、この一カ月もの間、一切の気配を感じさせなかった事に驚きを隠せない。
ラディウム公とランドルフが言い争っているが、思わず疑問が口をついて出た。
「ここ最近はディヴェラにいたけど、アルステッドの姿なんてどこにも無かったぞ?しかもアルステッドとユーステッドは仲が悪いって聞いてたけど、大丈夫なのか?」
「あいつらは顔を合わせてねぇし、アルステッドは潜伏してて、ユーステッドはディヴェラに戻って来てねぇ。お互いの所在なんざ知らねぇだろうからな。問題ねぇよ。」
「待て!ユーステッドだと!?貴様、アルステッドのみならずユーステッドまで……!そうか奴の振舞いは貴様が余計な入れ知恵をしたからだな!」
ランドルフがユーステッドとも繋がりを持っていると知ったラディウム公は一層激昂し、顔を真っ赤にして遂には玉座から立ち上がりランドルフへと詰め寄った。