居場所を知ってるからな
「して、ラディウム公。次期国王陛下アルステッド様へのお目通りは叶いますか?」
「……アルステッドは王位継承に向けて多忙を極めておる。貴様と会っている暇はない。」
「であれば、未来の臣下の忠節を受け取る事も重要な責務ではありませんか?」
「忠節であれば即位の日に改めて示してもらおう。」
フリードはアルステッドへの面会を要求するが、ラディウム公はそれでも拒絶を繰り返す。
どうあっても彼に会わせたくない、正確には会わせられないのだから。
「苦しい言い逃れはそこまでにしといたらどうだ、馬鹿兄貴。」
「貴様は……!」
ラディウム公とフリードが押し問答をしていると、突如玉座の間の扉が開き、大柄な赤毛の男が入ってくる。
「何故貴様がここにいる!ランドルフ!」
「本土から使者が来るって聞いてなぁ。アルステッドが次の国王になるって噂もあるし、その話でもするのかと思って見に来たんだよ。」
「この愚弟が……!出奔した貴様が野次馬に来るなど、恥を知れ!」
「恥を知るのはテメェだろうが!元はと言やぁテメェが見たくねぇ事から目を逸らし続けてるのが問題なんだよ!」
「貴様、言うに事を欠いて目を逸らしているだと!?私は領主としてこのラディウムを」
「本気で領主としての務めって奴を果たそうとしてるんならオレは出奔なんぞしてねぇ!」
来訪者はランドルフ。
ずかずかとラディウム公の前まで進み、話に割って入り、そのまま二人は青筋を額に浮かべながら口論を始めた。
「お二方とも、落ち着いて下さい。僕はラディウム公の姿勢にもランドルフ殿の出奔にも口を出すつもりはありませんが、一点だけ伺いたい事があります。」
「……なんだ?」
「ランドルフ殿の仰っていた『言い逃れ』とはどういう事でしょうか?まるでアルステッド様に『面会を許可する、しない』の選択肢ではなく、そもそも『面会させることが不可能』であるかのように受け取れますが。」
「…………。」
「兄貴、だんまりじゃあ肯定してるようなもんだぜ?まぁ肯定するしかねぇだろうけどな!」
「何の証拠があって……!とにかく貴様は黙っていろ!」
「いいや黙らねぇよ!証拠だと?そりゃあオレはアルステッドの居場所を知ってるからな!」
その途中でフリードは二人を諫め、ラディウム公に問い掛ける。
ラディウム公は答えに窮し、ランドルフに口出しをされながら反論するが、そこで驚愕の情報がランドルフの口から飛び出した。
これまで探し続けていたアルステッドの居場所を知っている。
彼はそう言ったのだ。
「貴様……!やはり貴様が、貴様がアルステッドを!」
「おっと勘違いしてもらっちゃ困るぜ。あくまでもオレは『知ってる』ってだけだ。兄貴が思ってるようなことはしちゃあいねぇよ。」
「ならば!何故貴様が!」
「……とにかく、アルステッド様はいらっしゃらない。そういう事ですね?」
それを聞いたラディウム公はわなわなと身体を震わせながら怒りを露わにした。
ランドルフは落ち着いて自身の容疑を否定するが、ラディウム公は激怒したまま追及を続けようとする。
そしてフリードがやや責めるかのように終ぞ真実を語ろうとしなかった彼を諫めた。