ラディウム公の追及
「閣下、フリード様のお越しです!」
「通せ。」
フリードたちと共にラディウム城に入り、玉座の間へと案内される。
そして先行して室内に入っていた衛兵がラディウム公に許可を取って扉を開け、俺たちは招き入れられた。
「公爵閣下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。」
「……前置きは良い。何のつもりだ?」
ラディウム公は一瞬、俺の方に視線を向けてピクリと眉を動かした後に、フリードの挨拶を退けて詰問するように投げかける。
脱獄(と受け取られてもおかしくない出来事)の件に関しては言及されなかったので、少なくともこの場では問題としないと言う事だろうか。
ラディウム公はフリードと玉座の間の外、恐らくはそこに控えているフリードと共に戻って来た自身の兵士たちに鋭い視線を向けていた。
「次期国王陛下へのご挨拶に伺った次第ですが、何か気に障る事でもありましたか?」
「ふん、よくもぬけぬけと!我が麾下の兵たちを、何故貴様が連れてきた!よもや貴様、愚弟と手を組み……」
「あぁ、その事ですか。それでしたら偶然にも海賊討伐の任を終え、帰路に就いていた彼らと鉢合わせしましたので。此度の任務の話を伺いながら共に公爵閣下の下に参じたのですよ。」
「…………。」
「ご納得いただけたようで何よりです。」
「ふん……。」
ラディウム公はすさまじい剣幕でフリードを問い詰めるが、一方のフリードは特に慌てる事も動じることも無く、何らやましい事はないと言わんばかりの態度で返答する。
彼の態度と返答に矛を収めたラディウム公はそれ以上の追及を止めた。
「それでは本題なのですが、次期国王陛下、アルステッド様にご挨拶をさせて頂きたいのですが」
「ならん。」
「それは何故?」
「そもそも私がいつ貴様の理屈に納得したなどと言った?偶然だと?海賊討伐を命じたのは何カ月前だと思っている?その間、報告の一つとして寄越さず、だと言うのに貴様と共に戻って来た!しかも兵の指揮を命じた者の姿もない!これを怪しまず何を疑うと言うのだ!」
「聞いた話によると海賊たちの逃げ足が速く、追撃を続けているうちに遥か遠くまで出向いてしまい、危険性を鑑みて戦力の分散を避け、報告を後回しにして追撃を続けたと言っていましたね。それと将は海賊たちとの決戦で命を落としたとも。事の詳細については兵たちから話を聞いていただきたい。」
フリードがアルステッドに面会を願い出るとラディウム公は再び眉を吊り上げて追及を再開するも、先程と変わらずフリードは揺らぐ事無く整然と答えを返し、追及を受け流した。
しかしアルステッドが行方不明になった今、ラディウム公の追及は話題を逸らし彼の不在を悟らせない為の手段に感じられる。