ラディウムの兵士を引き連れて
ラディウム各地に散ってグランマとアルステッドを捜索し始めてから時間のみが過ぎ去り、何の成果も得られないまま帰還の日が訪れてしまう。
担当範囲を歩き回り、それとなく商人に来訪者を聞いたり、道を外れて人が立ち寄らなさそうな森やちょっとした山地付近を探してはみたものの、それでも痕跡の一つとして見つかる事は無かったのだ。
それでも他の仲間が、オルガノが、イーリスが、イーシャが、見つけてくれたかも知れない。何らかの手がかりを得ているかも知れない。
そう自身を奮い立たせてジュテームへと戻る。
しかし……
「え……?」
「やぁ、リョータ。久しぶりだね、元気にしていたかい?」
「フリード?」
ジュテームの街へと入り、『差し伸べる手』の拠点へと向かっていると、通りでひと月前に助けを求めた相手と出会った。
それ自体は何らおかしい事ではない。
しかし彼が従えている人、いや人々には困惑と驚愕を隠せない。
「どうして、ラディウムの兵士を引き連れてるんだ?」
そう、仮に彼の護衛だとしても、あまりにも数が多い。
それこそ前回の戦争時に率いていた軍勢にこそ及ばないが、それを想起させるほどだ。
そして今のラディウムにはそんな兵力は存在していないはず。
「悪いけど詳しく説明している時間は無くてね。僕はこれからラディウム城へと向かうんだけど、気になるのなら君も来るかい?」
「……あぁ、付いて行かせてもらう。」
彼は一体何をするつもりなのか、頼った人間として見届けない選択肢は無いだろう。
俺がいる事で何か良い影響がある訳でもないと思うが、事態が悪い方向へと転がりそうになった場合、それを抑える責任がある。
しかし以前脱獄まがいの事をしてしまったが、その後特に何も無かったし、フリードと一緒にいるからラディウム公に謁見して捕まる、なんてことは無いと思う事にしよう。
拠点で待っているであろう仲間たちには悪いが、俺はフリードに付いて行く事にした。
「なに、心配はいらないよ。今回の目的は勇士たちの凱旋と栄誉を祝う事と、それに伴って国王になられる方へのご挨拶だけだからね。」
「フリード、その……アルステッドの事なんだけど……」
前者は一旦置いておくとして、後者の次期国王に関しては問題がある。
どうやらフリードはアルステッドが行方不明になった事を知らないようだ。
秘密にされている事だが、フリードには教えておくべきだろう。
俺は声を潜めて周囲に聞こえないように、彼が書置きを残していなくなった事を伝える。
「なんだって?そんな話は聞いた覚えが……いや、情報統制か。しかしここで引き返す訳にはいかないね。情報提供感謝するよ。我々はあくまでもその情報を知らない体でラディウム公に謁見するとしよう。」
俺の話を聞いたフリードは一瞬、僅かに驚いたように眉を顰めたが、すぐにいつもの余裕を感じさせる微笑みに戻って振舞い方を決めた。
この謁見がどのような形で幕を閉じるのか、そしてラディウムの行く末はどうなるのだろうか……。