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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
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これ以上は私の口からは

「あまり……」

「良好ではない?」


ベックの語ったシンプルな理由に、思わずオウム返しするオルガノと俺。

しかし多少仲が悪かったとしても、状況が状況だ。

ユーステッドに説明すれば力になってくれると思うのだが……


「でも二人は兄弟なんだろう?ユーステッドだって流石に兄が行方不明になったんだったら……」

「それならば自分よりも父の、ラディウム公の助力を乞えと言われるでしょう。家族としての、兄弟としての情もあるでしょうが、それ以上に若様と弟様の間には複雑な関係があるのです。それが互いに干渉を妨げているのです。」

「兄弟なのにー」

「変なのー。」


ユーステッドの人柄からして、兄が行方不明になったのであれば捜索に乗り出しそうだと思ったのだが、その意見はベックによって退けられる。

仲の良い双子、イーリスとイーシャは僅かに悲しげに彼らの在り様を嘆いた。

いくら仲が悪いとは言え、そこまで距離が開いているのが不思議で仕方がない。


「そう言えば初めて会った時にアルステッドが複雑そうな表情で『優秀な弟がいる』って言ってたな……。なぁ、ベック。差し支えなければ二人の複雑な関係って奴を詳しく教えてくれないか?」

「申し訳ありませんが、これ以上は私の口からは……」


何故そこまで関係がこじれているのか尋ねてみるも、ベックは口を紡ぎ答えてくれない。

気にならない訳では無いが、今は記憶の片隅に置いておくとして、一旦状況をまとめよう。


「ともあれ、ユーステッドの力は借りられない。アルステッドはどこにいるか分からない。聞き込み調査も出来そうにない、と。」

「……どうすれば良いんだ?」


まさに八方塞がり。

オルガノは首をひねって聞いて来るが、それはこちらが聞きたいくらいだ。

しかしそれでも行動しない訳にはいかない。


「ジュテームの外ってなると探す範囲は大きく広がる。だから皆バラバラに分かれて別れて探すとしよう。中規模程度の村を中心に、それぞれの担当地域が被らないようにして周囲を捜索するんだ。」


結局しらみつぶしになってしまうが、それでも今はこれしか手段が思い浮かばない。

俺は机の上にラディウム領の地図を広げて村々を指差す。


「オルガノはこの村を中心にして探してくれ。イーリスはここの村を、イーシャはこっちの村を頼む。俺はディヴェラを中心に探す。オルガノとイーシャは担当地域の間にあるこの川を境界線にして、イーシャはディヴェラの南にあるこの集落までを捜索範囲にしてくれ。」


各人に指示を出して担当範囲を決めていく。


「それと、一か月後にフリードがラディウムに来るから、それに合わせて成果報告も兼ねて拠点に集合しよう。」

「よろしくお願いします。我々は引き続きジュテームを中心に捜索を行います。」


最後に再集結日時と場所を指定し、俺たちはそれぞれの顔を見て頷き合う。

出会ってから長い時間を共に過ごしたわけでは無いが、それでも確かな一体感を、心の繋がりを感じられた。

例え僅かな可能性であったとしても諦める理由にはならない、と。

そして俺たち『差し伸べる手』の面々はジュテームの外へ、ベックたちラディウム公配下の捜索隊は引き続きジュテームを捜索しに向かうのだった。


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