帰ってこない
「……帰ってこない。」
「随分遅いな。グランマは一体どこに行ってるんだ?」
「もしかしたら出かけたのはお城じゃないとかー」
「ジュテームから出てるのかなー?」
噂を広めたその日、夜になってもグランマは帰ってこなかった。
誰もどこに行ったのかを聞いておらず、何をしているのかも分からない。
グランマの身に何かあったのだろうか?
「探しに行ってくる。」
「あたしもー!」
「行ってくるー!」
「探したいのは俺も同じだけど、探す当てとかはあるのか?」
「「「…………。」」」
流石に心配になって、皆はグランマを探しに行こうとする。
しかし探すにしても闇雲に探していては見つからないと思われる。
せめて何か当てがあればいいのだが……
「当てはないが、街の連中に片っ端から聞いて回れば分かるかも知れん。」
「それだと時間が掛かり過ぎるし、最悪の場合流した噂がグランマの話で上書きされるんじゃないか?」
「それじゃー」
「どうするのー?」
当てがなくとも、探し続ければ見つかるかも知れない。
オルガノはそう考えたようでしらみつぶしに探す事を提案する。
しかし探すにしてもヤマを張って探した方が良いだろう。
「いったんラディウム城まで行って話を聞いてみよう。グランマが行きそうなところを優先して探せば、もしかしたら何か情報が手に入るかも知れないし、闇雲に探して周るよりは効率的だと思う。」
「そうと決まれば城に行くか。」
「でもこの時間に行ってもー」
「追い返されそうだよねー。」
「確かにもう夜だし、明日の朝に改めて向かった方が良さそうだな。」
「……分かった。」
俺の提案を聞いたオルガノは今度こそ、と出立しようとするが、イーリスとイーシャが言うように、夜と言う多くの人々が活動を控える時間に城へ向かっても取り合ってもらえない可能性が高い。
オルガノは不服そうに、しかし理屈は分かるといった雰囲気で席に着く。
「でも、本当にどうしたんだろうねー?」
「今まで何も言わないでいなくなるなんて事なかったのにねー。」
「グランマがそこら辺の連中に後れを取るとも思えん。」
「少なくとも、それだけ厄介な問題に関わってしまった可能性があるって事か……。しかもこのタイミングで……。」
グランマもまたフリードから頼まれた噂を広める為、何かしらの行動をしていたと考えられる。
その行動の最中、何者かに襲われるか、攫われるか、はたまた自らの考えで行方を眩ませているのか……。
もしも襲撃されたのであれば、その目的は?
もしも自ら姿を消したのであれば、その目的は?
どれだけ考えても分からない。
ただ胸中には不安と疑問が渦巻くのであった。