巻き込んでしまえば良い
「ランドルフもラッセルも難しい事言ってるけどー」
「結局争いは良くないって事ー?」
「うん、まぁそういう事だな。」
三人の議論の外で首を傾げていたイーリスとイーシャはユーステッドに反対する彼らの意見をざっくりと要約する。
蚊帳の外だったが、もしかしたら彼女たちが何らかの新しい考えをもたらしてくれるかもしれない。
そう淡い期待を抱いて問い掛けてみるが……
「争いはせずに、転生者たちと現地民たちが手を取りあえる、そんなアイデアがあれば良いんだけど……イーリス、イーシャ、何か思い浮かんだりしないか?」
「うーん……」
「分からんないやー」
「リョータ、どうにか出来ないー?」
「あたしたち、リョータみたいに頭良くないしー。」
「流石に無理があるな……俺もそんなに頭がキレる訳じゃないし……」
二人からは特にこれと言ったアイデアは出てこず、逆に俺にどうにか出来ないかと尋ねられてしまった。
とは言え、俺もどれだけ考えても、頭をひねっても、良い案は出てこない。
「いや、待てよ……」
先程、イーリスとイーシャは俺を頼った。
その俺が誰かを頼ったって良いのではないか?
このラディウム以外の誰かを。
「皆、聞いてくれ!」
俺はずっと自分たちでどうにかしなくてはならないと考えていた。
考えてしまっていた。
だからこそ思考は袋小路に入り、良案も浮かばなかった。
しかし……
「ユーステッドはラディウム公に公爵の地位を退いてもらいたい。でもその手段が力尽くだからランドルフとラッセルは反対してる。」
何もラディウムの問題を、ラディウムだけで解決しなくてはならないなんて誰が決めたんだ。
そもそも俺自身も、元々は外部の人間だ。
しかしこの問題は俺の手に負えるような、この地の住人に手に負えるような状態ではないのだ。
「俺も争いは良くないと思うけど、だからと言ってユーステッドが納得するような良い案がある訳じゃない。」
ならば更に優れた人間を巻き込んでしまえば良い。
「だから本土の知り合いに力を借りようと思うんだ。」
そう、半ば強制的に俺をこのラディウムに送り出した人物を。
本土の貴族の腹心でかなり自由に動き回る事が出来る人物を。
俺よりも頭が良く、人脈にも優れた、巻き込んでも問題なさそうな人物を。
「あいつなら、フリードならどうにかしてくれる……かも知れない。」
「フリード?誰だ、そいつぁ?」
「ふむ、確かジャックの友人でホーエンゼレル公の臣下だったはずですが。」
「そのフリードとやらが父上を除けるってのか?」
フリードの事を知らずに首を傾げるランドルフ、顎に手を当ててフリードの事を思い出すラッセル、フリードの事を疑わし気に腕を組むユーステッド。
その反応は三者三様であった。