お前はラディウムを出ろ
イーリスとイーシャと共にランドルフの居宅へと向かうが、屋外からでも途切れ途切れに議論の声が聞こえてくる。
「だから…………!叔父上とてこの…………を…………と言う……ですか!」
より正確に言うのであればユーステッドの声が聞こえた。
具体的な内容までは分からないが、感情を露わにしながら訴えていそうな雰囲気を鑑みるに、まだランドルフを説得は出来ていないようだ。
声こそ聞こえないが、恐らくラッセルも彼を止めようと冷静に諭しているのだろう。
そしてそれが功を奏し、議論は平行線になっているのだと考えられる。
それならばまずユーステッドから話を聞き、その上でランドルフのスタンスを尋ね……
「オージ様いるー?」
「ラッセルとランドルフもー。」
「イーリス!?イーシャ!?」
双子は考えをまとめている俺を尻目に、ノックもなく扉を開けて家に入る。
一切遠慮のない動きに面食らうが、外で待ち続ける訳にもいかないので、俺もそれに続いて入室する。
「リョータか……」
「ユーステッド……」
議論を中断してこちらを見やり、ユーステッドは逡巡するように俺の名前を呟く。
分かれたのはつい先日で、時間的にはそこまで経っている訳では無いが、なんだかとても久々に会ったような気持ちになった。
それはこれまでの時間があまりにも濃厚だったからか、それとも眼前の人物が以前とは違った目をしているからなのか。
それは分からない。
しかし……
「聞かせてくれないか?一体何をしようとしているのかを。一体何の覚悟を決めたのかを。」
だからこそ、俺は彼に問い掛ける。
志を共にしていた、と言う訳では無いが、それでも俺たちは人々の安寧と平穏を願っていたことに変わりはない。
「……リョータ、お前はラディウムを出ろ。イーリスとイーシャ、それにさっき本人にも言ったがラッセルも、ジュテームに居るって言う仲間たちも。なんなら転生者たちも一緒に、だ。」
「出ていけって……転生者は全員、ラディウムから出ていけって言うのか!?結局、そうするしか道は無いって言うのかよ!」
「そうじゃねぇ!だが……これから事は大きく動く。皆を巻き込みたくはねぇんだ。ジュテームの方には転生者が沢山いる。いったん避難してくれって事だよ。」
「だから、何をしようとしているんだよ!」
彼はラディウムから俺たち転生者の退去を求める。
現地民と共に生活していたユーステッドであれば、彼らの方を優先するのは分からなくもないが、それでも、穏当な形とは言え、転生者たちを排除しようと言うのは受け入れがたい。
それに対して非難を含めた声色で反論しようとすると、彼は『いったん』避難してほしいと話を続ける。
結局、転生者たちを避難させてまで何をなそうと言うのか……
「父上には、いや、現ラディウム公には退位してもらう。あの人にゃこのラディウムを納めるのは無理だ。退いてもらうしかない。」
「っ!?」
彼は俺が予想だにしない驚愕の策を口にした。