表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
172/247

いなかった

「どうにかなったようだな。」


アルステッドの演説により、ひとまずは転生者たちの熱は下がり、内戦の可能性を排除出来た訳でこそ無いが、いったんは抑える事が出来た。

人々は心に燻りを残しながらも徐々に解散していき、広場には俺たちと僅かばかりの通行人が残される。


「アルステッド、助かった。ありがとう。」

「いや、こちらこそ感謝させてくれ。良い語りであったぞ。」

「結局、俺じゃアルステッドみたいに心に響かせることは出来なかったけどな。」

「おや?そうだろうか。少なくとも私の心には響いたぞ。」


俺はアルステッドに感謝の言葉を告げると、彼もまた感謝で応える。

しかしこの場を納めたのは彼のお陰だと言うと、彼は自身の胸元をトントンと親指で指して微笑んだ。

そう言ってもらえるだけで、俺の語り掛けが無駄ではなかったと思う事が出来て、なんだか少しだけ誇らしい気持ちになれた。


「しかし驚いたぞ。まさか海賊たちがただの民であり、弟は彼らと共に生活していたとは。」

「聞いてなかったのか?」

「あぁ、父からは何も。」

「ただ単に戻ってきた弟君が勘気に触れて謹慎、共に居たリョータ殿も牢獄で頭を冷やさせているとしか仰っていませんでしたね。」

「それじゃあなんでここに?」

「城を出たところでグランマと出会ってな。そこで広場で大変な事になっていると話を聞いて来て見ればリョータが演説をしていたと言う訳だ。」


アルステッドとベックはラディウム公から何も聞いていなかった事を語り、海賊の正体も初めて耳にしたと言う。

思えば牢獄から出してもらうときはジェーン婦人の事を聞いただけで、俺から海賊の話が出来ていなかった。

その時は投獄される理由になった人物の事を考えていて、報告にまで頭が回っていなかったのだ。

一方、ラディウム公からすれば、現地民だろうと海賊は海賊であり、排除すべき対象と考えているのだろう。

それ故にアルステッドたちに伝える必要はないとしているのだろうか。

ともあれ、これでアルステッドからもより一層の協力が見込めそうだ。

少しずつではあるが、問題の解決に近づけている気がしない事もない。

いや、まずはその前に……


「そうだ、ユーステッドはなんて言っていた?『覚悟を決めた』ってどういう意味だったんだ?」

「弟は…………」


広場での騒ぎで後回しになっていたが、アルステッドに頼んでいた事について尋ねてみる。

すると彼は言葉に詰まり、僅かに沈黙する。


「いなかった。」


少ししてアルステッドの口から出てきた言葉は、ユーステッドの意図ではなく、彼の不在を告げるものだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ