お前たちの力を貸してくれ
「マズい事?一体何があったんだ?」
「皆が行動を起こそうとしている。」
「皆?行動?どういう事だ?」
言葉を端折り過ぎオルガノが何を言いたいのかが分からない。
首を傾げて聞き返すが、分かる事と言えば彼が焦っている事くらいだ。
「オルガノ、深呼吸して落ち着きな。ほら、吸って……吐いて……もう大丈夫かい?」
「すまん、大丈夫だ。」
グランマがオルガノに落ち着くように促し、彼はスー……ハー……と息を吸っては吐き、吐いては吸う。
数度、深呼吸をした後、彼は落ち着きを取り戻し、改めて何があったのかを説明する。。
「ジュテームに住む転生者たちが戦う事を決意した。」
「……!そうかい。これまでよく抑えてくれたね。」
「遂にか……!」
「準備は不十分だが、やる気だけは十分なせいでオレの説得も届きやしない。すまん……。」
「何謝ってんだい。あんたはここまで連中を抑えてたんだ。十分頑張ったよ。」
始まってこそいないが、この街の転生者たちは立ち上がる事を決めてしまった。
彼の口から語られたそれは、俺とグランマに息を呑ませるには十分すぎた。
しかしこれまで何をやっていたか分からなかったオルガノが、実は転生者たちを抑えていたとは……。
どのように抑えていたのだろうか?
もしかしたらまだ彼らが内戦を起こす前に出来る事があるかも知れない。
もしかしたらまだ内戦を止める策があるかも知れない。
そう思い、俺は彼に問い掛ける。
「抑えてたって……オルガノ、何をしてたんだ?」
「大した事はしていない。」
「オルガノはね、街の転生者たちの話を聞いて、戦おうとする連中を説得してたんだよ。『命を無駄にするな』、『この世界にもお前が死んだら悲しむ奴がいるだろう』、『もしいないならオレが悲しむ』、『それでもやろうと言うなら殴ってでも止める』、『半殺しにしてでも止める』ってね。こっちに来たばかりの頃は荒れてたオルガノがそこまで言うんだ。良くも悪くも説得力は十分だろう。」
「だが、もう奴らはオレの話に耳を傾けんだろう。」
オルガノは詳しく語ろうとしないが、彼が硬軟織り交ぜて説得を試みていたと、グランマの口から語られた。
口数少ない彼がそのようにして転生者たちを抑えていた事に驚愕するも、当の本人は現状を悔いている。
「グランマ、リョータ、お前たちの力を貸してくれ。今頃、大通りの広場で集会が行われているはずだ。」
「分かった。すぐに行こう!」
「わたしゃラディウム公に会いに行ってくるよ。流石にこの状況を無視は出来ないだろう。」
オルガノは頭を下げ、俺とグランマに頼み込む。
そんなことしなくても、答えは決まっている。
俺はオルガノと共に広場へと、グランマは単身でラディウム公の居城へと向かい、拠点を後にした。