表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
166/247

懺悔するかのように

「身体ではなく、心?」


アルステッドは不思議そうに首を傾げて問い掛ける。

やはりと言うべきか、彼の反応を見るにこの世界には心の病と言う概念は存在しなかったようだ。


「心とは……病むものなのか?」

「あぁ、俺のいた世界の概念だけど、心だって健康な状態だったり病気になったりって考え方があるんだ。」

「その考え方はこれまで聞いた事が無かったな。しかし心の健康など、どうやって判別すると言うのだ?これまで転生者たちがもたらしてきた道具にはそういった物は無かったが、リョータの世界では使われていたのか?」

「いや、診断とかで判別する事はあるだろうけど、専用の医療機器って意味では存在してない、のかな?」


俺も専門的な知識がある訳では無いから明言は出来ないが、少なくとも判別用の機械があるとは聞いた事が無い。


「それで『心を病む』とはどういう事だ?病と言う事は命に関わるのか?」

「自殺だったり、不眠症や過食症、拒食症を発症して体調を崩したりする事もあるらしい。でも症状は人それぞれだから、具体的にこう、とは言えないな。」


アルステッドは心配そうに心の病について尋ねる。

とは言え俺が実際に心の病とそれに伴う不調を体験した訳でもないし、つい先ほど出会ったばかりのラディウム公の状態を詳しく把握する事も出来ていない。

ただ、少なくとも……


「言い方は悪いけど、冷静さを失っているって言うか、正常な判断を下すのが難しくなってるって言うか……そんな風に感じられるんだ。」

「母上の葬儀の日から、父上はそれまで以上に政務に忙殺されるようになった。私もユーステッドもそのせいで父上と関わる時間は更に減った。しかし、わがままを言ってでも、家族みんなで悲しみを分かち合い、時を共にするべきだったのだろうか……。」

「それは…………。」


俺が自分なりの所感を伝えると、アルステッドは俯き、懺悔するかのように言葉を紡ぐ。

部外者である以上、俺にはそれが正解とも間違いとも言えず、沈黙以上の回答が出来ない。


「いや!今更詮無き事だな!自らのせいで家族が悩み、悲しむなど母上も望みはしないだろう!」


少しするとアルステッドは俯いていた顔を上げ、高らかに声を上げる。

しかし俺にはそれがどこか無理をしているような、よく言えば明るく振舞う事によって自らを鼓舞する、悪く言えば後悔や悲しみに蓋をして仮面被っているような姿に見えてしまった。

初めて会った時は明るく大らかな人物だと思ったが、実際にはそう見えるように振舞っているだけだったのかも知れない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ