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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
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陰謀であった

「それに……いや、これは話すべきか……?」

「話したくないって部分があるなら無理には聞かないけど、他に何かあったのか?」


更にアルステッドが何かを言おうとするも、途中で止めて自問する。

話が話なだけに、無理に聞く事は憚られたが、問題が無いのであれば聞きたいのも事実だ。


「何かあった、と言うよりはくだらない噂話の類だ。」

「噂話?」


アルステッドは重要ではなさそうだから話すかどうかを悩んだようで、彼は止めていた言葉の続きを語る。

その口から紡がれたのは『噂話』だった。


「母上の死は『陰謀であった』と言う噂だ。その噂が流れてから父上はますます冷たさを宿すようになった……。母上が亡くなるまでは、厳しいところもあったが、それでも暖かい方であったのに。」

「陰謀!?」

「先ほども述べたように、転生者であった母上との結婚は側近たちに反対されていた事もあり、まことしやかに事故に見せかけて謀殺されたなどと、な。」


しかし噂話と言えど、その内容は決して軽んじられる物では無かった。

陰謀論に傾倒するつもりは無いが、その理由が理由なだけに無視をする事も出来ないのだ。


「もっとも、証拠は何も見つからずに噂話は噂話として風化していったがな。」


この世界の技術水準では嵐の海に沈んだ船の調査をする事は難しいだろう。

謀殺、と言われると完璧に否定するのは難しい。

しかしそれを肯定する材料もまた無い。

悲しみを和らげるどころか更に悪辣な噂が流れ、さりとて怒りや憎しみを向けられる相手はおらず、ラディウム公はさぞかしやるせない気持ちになった事だろう。


「ジェーン婦人は転生者だったって言ったよな……。ラディウム公は効率が良いからって言っていたけど、やっぱりそれが今の政策に大きく影響しているんじゃ……。」

「母上が存命の頃から転生者を優遇する政策は続けていたようだが……明確に言い切る事は出来ないな。」


アルステッドはどちらとも言えないようだが、仮にジェーン婦人の影響が大きかった場合、ラディウム公を説得して転生者優遇の現状を変え、内戦の発生を防ぐ事は不可能に近い。

彼は今も尚、深い悲しみの底にあり、心は癒えていない。

そんな状態でジェーン婦人を話題に挙げようものなら今回の二の舞になる事は想像するに易い。

そもそも大切な人を失った悲しみを、十五年もの間抱え続けた悲しみを癒す術など、俺には分からない。

しかしラディウム公の態度とこれまで聞いた話から、ふと一つの考えが脳裏を過った。


「ラディウム公は、心を病んでいるんじゃないのか……?」


度重なる重度のストレスは彼を蝕んでいるのではないか、と。


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