信用を得られるように
「……いきなり信用しろなんて言うつもりは無いけど、それでも面と向かって『疑わしく思っている』って言うのはどうなんだ?」
「事実ですので。私の使命はあくまで若様をお守りする事。決してあなたのご機嫌伺いをする事ではありません。」
「別に機嫌を取れって言ってるわけじゃなくて……!」
あまりにもストレート過ぎる物言いに苦言を呈するが、マークは態度を改める様子も無く刺々しい言葉を続ける。
流石にここまで非友好的な態度を取られると苛立ちを覚えずにはいられない。
「ユーステッド、お前からも何とか言ってくれないか?」
「……。」
「マーク、武器を収めろ。言葉遣いはオレが許している。」
「承知致しました。」
彼の主であるユーステッドにも家臣の態度に一言言ってもらおうと思い声を掛けると、主人に対して無礼な物言いと捉えたらしくマークは収めていた短剣を再び取り出す。
ユーステッドの一言で彼は即座にそれをしまうが、確かにマークの前でこの言動は見咎められても仕方が無い態度であったと察してばつが悪くなる。
「それとリョータ、こいつの忠誠心は本物だ。もしも問題のある発言をすればオレはそれを嗜めるが、現段階で立場上マークがお前の事を信用できないのも事実。この物言いが気になるなら信用を得られるように振舞ってくれ。」
「……分かった。」
俺の協力者として、そしてマークの主人としてユーステッドは中庸の姿勢を取った。
実際、彼の言う事にも一理あり、俺は頷いて追及を止めた。
しかし俺の彼に対する振舞いからマークの信用は一段階ほど下がったようにも感じられるが、この地の底に等しそうなレベルの信用度をどう上げれば良いのだろうか。
「まぁ、普通に誠実に相対するしかない、か……。」
結局、信用なんてそう簡単に得られるものではないだろう。
それに俺に出来る事なんて限られてるんだ。
だったら自分らしく関係を構築していくしかない。
「さて、マーク。オレたちは父上と、ラディウム公と話がしたい。手引きを頼むぞ。」
「承知致しました。しかし若様、『たち』と言う事はリョータ殿もご一緒に?」
「あぁ、共に話をする。」
ユーステッドがマークに
すると彼はちらりとこちらを見た後に主人に進言する。
「恐れながら、リョータ殿を連れて行く事は止めておいた方がよろしいのではないかと。」
「信用云々は一旦置いておくとして、別にラディウム公を害するつもりは無いし、そもそもそんな実力もないぞ。単純に公爵の考えが知りたいだけなんだ。」
「無理に信用しろとは言わんが、こいつに問題が無い事はオレが保障する。それに父上の護衛を蹴散らせるほどの実力があるのならマークの奇襲も失敗していただろうからな。」
「若様がそう仰られるのであれば、そのように。」
「世話を掛けさせるな。」
マークは一瞬、複雑そうな表情を浮かべ、主人に対して恭しく一礼して小屋を後にした。
面会でラディウム公の考えを聞き出す事と、問題無く面会を済ませる事でマークからの信用を積み重ねる。
まずはこの二つが成功する事を祈って彼の帰りを待つことにしよう。