納得半分、疑問半分
「ラディウム公の息子が次期国王になるって諸侯会議で決まったらしい。」
「それは本当か!?」
「実際に会議に参加していたフリードって奴から聞いたんだ。ただし海賊の問題が解消してからって条件付きらしいけどさ。」
「……そうだったのか。オレは父上が会議に向かう前にディヴェラで生活を始めたから、その話に関しちゃ何にも知らなくてよ。」
どうやらユーステッドは何も知らなかったようだ。
アルステッドは常にジュテームにいたから聞いていたのだろうが、公爵の下から離れていた彼であればそれも仕方が無いか。
「念の為もう一度聞いとくが、父上は海賊の問題を解決したらって言ってたんだよな?」
「あぁ。だからフリードの頼みで俺がラディウムに来たんだ。とは言っても、あいつから話を聞いたときは何を解決すれば良いのか教えられてなかったけど。」
「その結果、父上は軍を派遣したって訳か。」
ユーステッドは再度確認をしてくるので、俺は間違いない事を伝える。
彼の言う通り、そもそも解決の意思が無ければ討伐軍を派遣したりなどしないだろう。
「でも全滅したんだよな……。」
「全滅?そちらにはそう伝わっているのか。いや、誰も帰る事が無かったのであれば決しておかしな話では無いか。」
「ん?どういう事だ?」
「領邦軍、海賊を討伐に来たラディウムの兵士たちであれば皆無事だ。正確に言うのであれば我々に投降した。」
「投降!?」
全滅したんじゃなかったのか!?
いや、よくよく思い返してみればアルステッドは敵の数は予想より多いと語っていた。
つまりは討伐軍の兵士たちが敵に回った、海賊に降伏したと言う事か。
あの時、詳細は聞かせてもらえなかったが、確かに海賊を討伐しに向かった兵士たちが寝返ったとあれば情報を伏せるのも理解が出来る。
しかし一つ疑問が解消したとは言え、また新たに生まれた疑問がある。
「その顔は納得半分、疑問半分ってところか?」
「あぁ、アルステッドから敵の、海賊の数は想像以上に多そうだって聞いたから、兵士たちが降伏したって話はつじつまが合う。けどなんで降伏したかが分からないんだ。」
「彼らは皆、現地の住民、つまりは非転生者で構成されている。つまりはオレたち側の人間って事だ。だからオレと叔父上が降伏を呼びかけたら武器を捨てて戦闘を放棄したんだ。唯一、彼らを率いていた将だけは降伏を拒んで戦いを挑んできたが、叔父上との一騎打ちの末に戦死した。」
なるほど、それならば納得も出来る。
元々この地に住まう民同士で争うなんて士気が上がる訳がない。
加えて相対する敵は自分たちの立場に、現地の住民の立場に寄り添ってくれる領主の子息。
もしも兵士たちが転生者で構成されていたのであれば、互いの悪感情から凄惨な殺し合いになっていたと考えると、亡くなった指揮官には悪いがこの結果は不幸中の幸いと言うべきか。