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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
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伝統

「そもそもなんだって転生者たちが……」

「海賊が跋扈する状況、ラディウム公は解決出来ましたか?」

「いや、出来ていないから俺がここに……もしかして皆は自分たちで海賊を排除しようだなんて考えてるんじゃないだろうな?」


俺はフリードに頼まれて海賊の問題を解決する為にラディウムに来た。

つまりはラディウムを差配する、政治的決定権のある上層部は海賊の問題を解決しようとしていると言う事だ。

しかし今尚それは叶っていない。

そんな状況の中、海賊の問題を解決したいと考えるのは上層部だけでは無いと言う事か。


「ラディウム公は海賊を討伐しない、いや海賊を討伐しようとしたけど返り討ちにあった。しかもその情報は商人間で噂になっている……。」


ラディウム公が、兵士たちが頼れないとなれば……


「自分たちの手で海賊を除こうと考える、のか?」

「こちらの姿勢は向こうの転生者たちには分かりませんからね。自らの生活を守る為にも武器を手にしてもおかしくはありません。」


兵士たちですら敗れた相手と戦うなど危険だとは思わないのだろうか。

いや危険度の高低の問題では無く、自分たちの身を守るために戦わざるを得ないと考えてしまっているのだろう。


「それじゃ転生者は海賊、現地民を攻撃する事になるし、現地民は身を守るために戦わないとならない……。」

「双方が双方に対して不満を抱いております故、事が始まれば、殺し合いによって嫌悪が憎悪・怨恨にまで悪化すれば躊躇う所以は無いでしょうな。」

「そうなったら止まる事の出来ない、止められるとしても困難で、多くの犠牲者が出る事になる……。」

「それを理解しているからこそ、ランドルフ殿は海賊を始めとした現地民たちの統制しているのです。最悪の事態を回避する為に。」


事態を理解するほどに、可能性を口にするほどに、胃は熱を帯び、脳は思考を拒む。

極度の緊張と不安は呼吸を乱し、冷静さを奪う。

しかし俺が顔を蒼褪めさせている中も、ラッセルは変わらぬ表情で淡々と話を続ける。


「もしもランドルフ殿が海賊として活動を始めなければ反乱と言う形で現地民たちが蜂起していたでしょうね。もっとも、ラディウム公は未だに転生者を優遇する政策を採り続けた結果、時間稼ぎにしかならなかった訳ですが。」

「な、なんでラディウム公は政策を改めなかったんだ!?こうなる可能性は考えなかったのか!?それとも領民が犠牲になる事を理解した上で放置したって言うのか!?」


以前会ったトリア公とは真逆の姿勢に驚きを隠せない。

彼は自らの領地と領民以外はそこまで重要視していなかったが、逆に自らの庇護下にある者は大切にしていると言える。

しかしラディウム公は争いに巻き込まれるであろう領民を、争いによって荒廃するであろう領地を無下にし、放置する姿勢を崩さないのだ。

実際に会った事のない人物だが、それでも彼の事は嫌悪感を覚えずにはいられない。


「このラディウムは転生者を優遇し、それらの持つ知啓を以て発展してきた地域です。故にそれはもはや制度を越えて伝統となっているのです。」

「伝統……。」


伝統だから?

伝統だからと言って不和の種を放置するのか?

あまりにも正気とは思えない理由に、俺は絶句した。


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