なるほど、徒歩で来た訳か
「どーしたのーリョータ?ポカーンって口を開けちゃてー。」
「そーそー。そんなにビックリしてどーしたのー?」
「いやいやいやいや!」
彼女たちは俺の方を見て不思議そうに首を傾げて問い掛ける。
俺は困惑しながらも、こんな表情にさせてきた張本人たちに対してどうにか言葉を絞り出す。
「どうしてここにいるんだよ!?」
そう、ラッセルの家から出てきたのは、本来ならばこの場にいるはずのない双子。
「イーリス!イーシャ!」
『差し伸べる手』の仲間である彼女たちが何故か現れたのだ。
「え?どーしてって」
「普通に歩いてだけどー?」
なるほど、徒歩で来た訳か。
いや待て違う、そうじゃない。
「そうじゃなくて、なんでジュテームにいるはずの二人がここにいるんだって聞いてるんだよ!」
当然とも言わんばかりの物言いに、混乱した俺の頭は一瞬それで納得しそうになったが本当に聞き語ったのはディヴェラに来た手段ではなく、ディヴェラにいる理由なのだ。
「だって久しぶりにディヴェラに来たかったしー。」
「先に着いたらリョータが驚くかなーって。」
「あぁ、あぁ、めちゃくちゃ驚いたよ!」
「やったー!」
「大成功ー!」
驚かせるためにここまで来たと言う二人に呆れ半分、怒り半分に感想を告げると、彼女たちはハイタッチして喜びを露わにする。
お説教をした経験はあまり無いし、好きでもないが、それでもここは彼女たちの為にもガツンと言わなくてはならない。
「あのなぁ、もしも海賊に襲われたりしたらどうするつもりだったんだよ?無事に到着できたから良かったものの、もしかしたら死んでたかも知れないんだぞ。」
「大丈夫大丈夫ー。」
「大丈夫って、いくらなんでも楽観的過ぎる。本当に命の危機と隣り合わせだって自覚が無いんじゃないか?」
「だってあたしたち知り合いだしー。」
「もしも二人が死んだらみんな悲し……知り合い?」
何ともないようなイーリスの態度に頭痛を覚えながらも説教をしていると、イーシャが聞き捨てならない一言を発する。
その一言は俺の話を止めるには十分過ぎた。
「そーだよー。」
「あたしたち最初はディヴェラにいてー。」
「それからグランマに拾われてジュテームに行ったんだー。」
「つまり……」
こちらの住人とは顔見知りだった、と?
だから海賊に襲われる心配は無かった、と?
「だから巡回してる人たちとかー。」
「街の人たちとは知り合いなんだー。」
そう、そもそも彼女たちはここに来るまでに危険など無かったのだ。
それならばグランマは最初からこの二人に手紙の配達を頼めば……
いや、本来の目的を忘れてはいけない。
それだと俺が現地で問題を理解する機会が無くなる。
それに凶悪と噂される海賊と言っても、実際の危険度は高くない。
だから躊躇いなく、それどころか木剣を使えと渡して俺を送り出したのか。