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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
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『船長』と呼んだ

「てーこーするってんなら仕方ねぇ!」

「ちょいと痛い目見てもらうぜ!」

「見つかった以上、やるしかないか……!」


海賊の二人組はそれぞれ武器、棍棒とフレイルを構える。

俺も腰元の剣を抜こうとして、グランマの話を思い出し、それを思い止まる。

代わりに手にしたのは彼女から『海賊の問題を理解する為に』と渡された木剣。

武器としての攻撃力は低いが、それでもこれで戦わざるを得ない。

逃げる事も一瞬考えたが、追いつかれるなり、他の海賊と合流してしまう危険性を考えて覚悟を決め、木剣を正眼に構える。


「おらぁ!」

「そらぁ!」

「よっ、と!」


男の片割れが棍棒を振りかぶり、叩きつけてくる。

もう一人もそれに続いてフレイルを振り回し、殴りかかってくる。

俺は時に身を逸らし、時にステップでそれらの攻撃を回避し、チャンスを待つ。

幸いなことに彼らの攻撃は大振りで避ける事は容易い。

かつてジャックと行った模擬戦を思い返せば練度は低く、恐ろしさもない。

凶悪な海賊だと思い、戦う前までは恐怖を抱いていたが、いざ開戦となると想像以上に冷静に、過度に恐れる事なく立ち回る事が出来ている。

少なくともニコライやジョセフと対峙した時の方がよほど恐ろしかった。


「こんのっ!ちょこまかちょこまかと!」

「隙あり!」

「ぐえっ!いってぇなぁ!」


回避に徹して様子を窺い、隙が出来た瞬間に攻撃を叩きこむ。

その一撃は勝負を決める決定打には成り得ないが、しかしそれでも少しづつ、確実に、海賊の体力を削っていく。

一向に攻撃が当たらず、じわじわと体力が削られる事に焦りを覚えた海賊の攻撃は更に精彩を欠き、更に隙を晒す循環が成り立った。


「ぜぇ……はぁ……ち、ちくしょう……!すばしっこい奴め……!」


どれほどの時間を戦ったか分からないが、一人は既に戦闘不能になって地に臥せり、一人は棍棒を構えながらも息を荒くしている。

俺もまた疲労を感じてはいたが、回避しながら反撃に徹していたおかげで消耗は相手よりも少ない。

一対一の状況になった今、このまま回避を重点に置いた戦法を続ければ間違いなく勝てるだろう。

ワシャールの街で訓練を始め、『差し伸べる手』のリーダーになった後もそれを継続してきた成果が、成長が、ここに至って確かに感じられた。


「おめぇら、何やってんだ!」

「せ、船長!」

「船長!?」


しかしあと少しで決着が付くといったタイミングで、数人の男たちを従えた髭面強面の男が割って入ってきた。

そして海賊は彼を『船長』と呼んだ。


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