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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第2章 ラディウムのヴァイキング
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父はそれを望んでいる

店を出ると既に日が傾きかける時間になっており、ダイアンと別れて拠点へと戻る。

そこにはまたも訪れていたアルステッドが俺を迎えた。

そして早速、問題解決の案を求めてきた。


「む、戻ったリョータ!何か案は浮かんだか?」

「なぁ、アルステッド。いっその事フリード辺りに相談して援軍でも出してもらえないか?」

「それは無理だな。」


現状の厳しさと有効な作戦が思い浮かばない俺は、アルステッドに外部の助力を求めるべきだと伝える。

しかしそれは即座に拒絶され、彼は淡々とその理由について述べ始める。


「第一にジョセフの乱で国力は疲弊し、他の領の問題を解決する為に派兵をするだけの余裕も、派兵を決定したとして臣民を納得させるだけの理由もない。」


確かにジョセフとの戦いこそ終わったが、むしろその後始末が問題となっている。

多くの人々が傷付き、疲弊している事だろう。

そんな彼らに更なる負担を強いる事は難しい事は分かる。

しかし海賊の被害が拡大しては今よりも多くの人々が被害に遭うと言う事と同義であろう。

そう考えた俺が口を挟む前に、彼は更に言葉を続ける。


「第二に仮に派兵を受け入れて海賊を討伐できたとしても、それに報いる事の出来る程の見返りを用意できない。何せ我々の将兵らが解決できなかった問題を解決するのだ。恩賞を渡す相手がリョータのような個人規模ならともかく、相手は貴族とその麾下だ。用意しなくてはならない恩賞の質も数も並大抵のものでは角が立つ。加えて王位に就いた後に国庫から恩賞を用意するにしても国家の立て直しに甚大な影響を及ぼしかねない。」

「…………。」


見返りの点では反論のしようがないので黙って耳を傾ける。

海賊と言う命を懸けた戦いを担ってもらう以上、報酬もなく任せる事は出来ない。

ましてや自分たちでは勝てなかった強敵を相手にしてもらうのだ。

仮に私自身が前線に出て戦いに臨めと言われたら断るか、莫大な報酬を要求するだろう。


「第三にそもそも我々が派遣した討伐軍が敗北した事は一部の人間以外知らない機密としてある。だと言うのに諸侯に協力を要請しては情報封鎖をした意味が無い。この問題はあくまでも可能な限り内々に処理しなくてはならないのだ。」

「言わんとする事は分かるけど、正直言ってそんな理屈並べている場合じゃないと思うんだけど。」

「それは百も承知だ。しかしそれでも!それでも、我々は自らの力でこの難題に対処しなくてはならないのだ!我が父は、それを強く望んでいる……。」


最後の理由に関しては面子が問題ではないだろうか?

それが理由となっているのであれば、苦言を呈さずにはいられない。

しかし俺の意見を聞いたアルステッドは表情を歪めながら諸侯を頼る訳にはいかないと語る。


「アルステッド、お前……」

「言うな……!私は……私は…………!」


父の意思、領主としての決定、それは次期国王の座を約束されている彼であっても覆す事は出来ない。

何故なら今はまだただの領主の子息に過ぎないのだから。

それを慮って呼びかけると、彼は俯いて拳を握り締め、絞り出すような声で俺の言葉を遮るのであった。


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