もしかしたら可能なのでは?
「そんな訳で、ジャックがわたしたちの家族に、仲間になったのさ。」
「へぇ、昔はそんなに荒っぽかったのか。」
今は荒っぽくはないと言う訳では無いが、それでも言葉遣いも振る舞いも、グランマから聞いた話と比べると雲泥の差だ。
「まぁ口が悪かったり振る舞いに問題があったりしたら殴ってたら、だんだん大人しくなっていったんだよ。」
「…………。」
彼女が懐かしそうにそう言うと、オルガノが顔を背ける。
取り敢えずこの男も昔は問題児だったと言う事が伝わってきた。
この寡黙さも、余計な事を言わないようにしているだけなのではなかろうか。
「子供の頃のジャックだったらグランマ相手でも反撃してきそうだけどねー。」
「もちろん。でもそれがどうしたってんだい。わたしからすりゃ、子犬がじゃれてるようなもんだったよ。」
「グランマにかかれば猛獣だって小動物扱いだからねー。」
猛獣を相手にするなんて経験、そもそもする事が無いと思う。
しかしそれほどまでに強いだなんて、元居た世界ではどんな環境で過ごしていたのだろうか。
「本当に同じ人間なのか疑わしい……。」
「失礼だね。わたしゃどこにでもいる乙女だよ。」
「っ…………。」
オルガノの人外発言に対し、グランマは『ふんす』と鼻を鳴らして否定する。
『乙女』と言う単語へのツッコミを押し止めた事は、彼が沈黙しているにも関わらず伝わってきた。
うん、俺もいい歳した女性が乙女を自称する事に関しては野暮であるがツッコミそうになる。
「グランマなら海賊だって退治出来るんじゃないか?」
「いやいや、いくらグランマでもそれは無理でしょー。無理だよね?」
「そーそー。遠くから弓矢を打たれたら敵わないってー。敵わないよね?」
「なーに言ってんだい。二、三人ならまだしも、徒党を組んだ相手に勝てる訳ないだろう。」
「三人同時に戦っても勝てるから、そう思われるんだ……。」
仲間たちからも『もしかしたら可能なのでは?』と若干思われているようで、否定しつつも本人に確認している。
複数人同時に相手出来るのなら十分に強いと思うのだが。
ジャックもそうだが、昔からこの世界に居ついている人間ほど戦闘能力が上がるのだろうか。
「まぁ、悪い子がいるんなら、お仕置きしなくちゃならんとは思うんだけどねぇ。」
「っ!」
「あんたじゃないから安心しな、オルガノ。」
「ほっ……。」
「悪い事したらお仕置きはするけどねぇ。」
「っ!」
グランマが溜め息を吐きながらぼやくと、オルガノがびくりと肩を揺らす。
それを見た彼女はオルガノに向けて言っている訳では無いと語り、彼は安堵するが、次の瞬間には釘を刺して再び彼を震えさせる。
もっとも、半分くらいは揶揄って遊んでいるだけにも見えたが。
ともあれ、彼女は怒らせないように気を付けよう。
そう心に決めた夕餉であった。