ラディウムへようこそ
「おっ、あんたがリョータだねぇ?よく来たね、わたしはマデリン。皆からはグランマって呼ばれてるよ。」
「アタシはイーシャ。そこのイーリスの妹だよ、よろしくねー!」
ふくよかな体系の初老の女性はマデリンと、イーリスによく似た女性はイーシャと名乗った。
なるほど、姉妹なら見た目がイーリスとよく似ているのも納得だ。
「それじゃあ改めて、ラディウムへようこそ。わたしたちゃあんたの事を歓迎するよ。ゆっくりしていってね。」
「と言っても一人外にいるから勢揃いって訳じゃないんだけどねー。」
「ねぇねぇグランマー。もう食べて良い?お腹ペコペコー!」
「はいはい、召し上がれ。ほら、若様たちも席に着いて、たーんとお食べ。」
グランマは両腕を広げて歓待の意を表すが、イーシャとイーリスはそれを気にせずに口を挟む。
その様子に彼女は呆れながら俺たちに喫食を勧めるのであった。
食事を始めしばらくした頃、俺はマデリンに一つの質問をする。
「気になったんだけど、マデリンはどうしてグランマって呼ばれてるんだ?」
「それはね、わたしの故郷じゃおばあちゃんの事を『グランマ』って呼ぶからさ。その話をしたら『マデリンは皆のグランマだ』って言われてねぇ。」
最初はそういう名前なのかと思ったが、本人はマデリンと名乗っており、呼び名の理由が分からなかった。
しかし理由を聞いてみれば頷く事も出来る。
彼女はいかにも『皆のおばあちゃん』と言った雰囲気を醸し出しているのだから。
「なるほどな。」
「優しそうな見た目だけど、グランマの事は怒らせないようにねー。とーっても怖いんだから!」
「こーら、わたしゃそんなに怒りっぽくはないよ。」
「…………!」
「どうしたオルガノ!?なんで顔を蒼褪めさせて震えてるんだ!?」
マデリンのあだ名の由来を聞いて得心していると、イーシャが茶化すように割って入る。
グランマは彼女を窘めるように叱るが、黙々と食事をしていたオルガノは何かを思い出したかのように、トラウマを刺激されたかのようにガタガタと震え始めた。
もしかして彼は昔、グランマを怒らせて酷い目に遭ったのだろうか。
何があったのか気になるが、彼の有様を見ていると聞くに聞けない。
「はっはっは!相変わらずここは賑やかだな!」
「若様もグランマの事は怒らせないようにして下さいよね。私まで一緒にお説教される事になるんですから。」
「それもまたお目付け役の務めと言うものだ!」
「その務めは果たしたくないです。」
「私とお前は一蓮托生!遠慮するでない!」
「遠慮じゃなくて拒否です。あと若様が王位に就いたらお目付け役はお役御免です。」
一方でアルステッドとベックは苦笑いしてしまうようなやり取りをしている。
相変わらず賑やかと言うが、そう言っている本人も十分に賑やかなのは自覚があるのだろうか。
「継承ねぇ……。それにしてもジャックが後進に道を譲るとは、あれから随分と時間が経ったもんだよ……。」
そんな彼らのやり取りを見たグランマは、ジャックの名前を出して感慨深そうに遠い目をしていた。