検問と後輩
「止まれ!」
「少しばかり荷を改めさせてもらうぞ。」
検問では赤い鎧を着た2人の兵士に止められた。
何事も無ければいいが。
「貴様ら、どこに向かっている?」
「交易の為に、リビユの街へ。」
「商人の一団と言う事か。どこへでも金の匂いを嗅ぎつけて、卑しい連中め。」
「おっしゃる通りで。しかし国に対する忠心が無いわけではございません。こちらをお納め下さい。」
「………ふん。それでいい。」
兵士の一人はレオノーラさんに詰問して嫌味を言う。
一方のレオノーラさんは表情を変えず、賄賂を渡す事でそれをいなす。
兵士は不満げな表情だが賄賂を受け取り、それ以上は追及しない。
検問とは言うけれど、実際の所は賄賂を回収するためにあるんじゃないかと疑わしい。
以前もタガミ先輩が兵士に賄賂を渡していたし、そこかしこに腐敗した兵士たちが蔓延っているのだろう。
「さてと、こっちは馬車の中を確認させてもらうぞ。」
「…………。」
もう一人の兵士は馬車の中を軽く確認する。
積み荷の一つ一つをしっかりと確認している訳では無いので、今のところ樽の人(仮)はバレていないようだ。
ドキドキしながら確認が終わるのを待っていると、兵士から質問された。
「お前らの商会はどこのギルドに属している?」
「分かりません。」
「分からない?お前はこいつらの仲間ではないのか?」
「すみません。こいつは先日雇ったばかりの新入りでして。」
「道理でパッとしない腑抜けた面をしている訳だ。」
腑抜けた顔って、余計なお世話だ!
と言いそうになるが、グッと堪える。
「俺達は共和国西部にあるバゼノーのギルドに属してたんですが、反乱軍の連中に占拠されてこっちまで避難してきたんですよ。」
「そうか。それは大変だったな。だが安心すると良い。我々は反乱を早急に鎮圧し、あの頃の様な平和を取り戻して見せよう。」
うん、腑抜けた顔とか言われたが、それでも外の兵士と比べるとかなりマシに見える。腑抜けた顔とか言われたが。
まぁ兵士の全員が全員、碌でもない奴な訳が無いか。
そんな事を考えていると樽の人(仮)はバレる事なく無事に確認が終わったようで、兵士は馬車から降りて賄賂を受け取った兵士と合流する。
よし、これなら無事に検問を抜ける事が出来そうだ。
「積荷は特に問題は無さそうだ。」
「あぁ、こっちも話を聞いたが、問題はないが………」
問題は無いが?
なんか引っかかる言い方だな。
問題は無いならさっさと通してほしいんだけど。