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家庭内ホームレス  作者: とららん
エピローグ
30/30

エピローグ(スタート地点)

 手術から二週間が経った。季節はもう夏と呼んでも良いころだろう。

 鈴乃は手術後、丸々二日間眠り続け、その後は寝たり起きたりを繰り返し、まともに意識が回復したのは五日後だった。

 忍は手術後、鈴乃に会うことはなかった。

 気恥ずかしさもあったが、今は会わなくても良いと言うことは直感的に分かっていた。

 手術跡の診察時に中村から聞いた話しではあるが、鈴乃は動くことを制限されつつも特に不満は無いらしい。移植された臓器も強い拒絶反応が見られる兆候も無く薬も少ないようだ。

 清一郎の紹介で心臓移植を待つため、鈴乃を都内の病院へ転院させる算段を付いており、彼女は静かにその時を待っている。


 誠司は鈴乃のことで一段落ついたら実家へ戻り、診療所から再出発をすると言っていた。何かに吹っ切れ、やるべきことを見つけた。そんな顔をする彼に対し忍は寂しさと同時にうらやましく思えた。

「暇なときにでも顔を出す」それが、誠司に投げかけられた言葉だった。


 アキラは忍の両親が後見人となり、通信制の学校へ通えるようになったのが・・・『一度、自分の親に会ってみたいので暫く留守にします。鈴乃にまたねって言っといて、あとベッドの上は見るな』と書き置きを残し姿を消した。

 毎日のように鈴乃の居る病院へ通い詰めていたので、忍としては意外だった。てっきり、次の手術まで付き合うものだと思っていたからだ。

 稔は「せめて携帯電話くらい持たせるべきだった」とぼやいていたが、よく考えると思いつきと勢いで行動する彼女らしい選択だったのかもしれない。


 結局、家に残ったのは忍一人となった。

 両親も鈴乃の病院へ泊まり込み、着替えを取りに来る以外は帰宅せず、顔を合わせても軽く鈴乃の現状を聞くくらいだ。

 稔はともかく、和子と対峙することを忍はできるだけ避けていた。同じ空間にいても、お互いギクシャクした感覚で気を遣っている気分になってしまう。しかし、和子は帰り際に必ずパンケーキを焼いてくれた。それが、彼女なりの気遣いと忍に対する贖罪なのかもしれない。

 正直なところ、忍はどう答えれば良いのか考え倦ねていた。

 でも、今はそれで良い。今の自分は前の自分とは違う。そう思える気がする。


 家があっても家庭が無い。本当にそれが不幸なのか? 自分が居られる場所ではなく、みんなが帰れる場所になれば、それはそれで悪くは無い。

 その中で、自分で選べるモノ、やれるコトがあるのならそれから始めてみるのも良い。


「学校、行こうかな。それとも転校でもするか、今度は自分で決めて」


 夏の日差しを浴びながら、忍は何となく空を見上げた。


―※―


 いつかの日の午後のこと。日だまりが差し込むリビング、ソファに置かれたパグの縫いぐるみ。黄金色の光と風に触れ、新調したカーテンが微かに揺れた。


「ただいま」


 誰かに声を掛けられた気がした。


「お帰り」


 彼は心の底からそう返事をした。

 お互いが気恥ずかしそうに、静かに笑みを向け合った。


                      完

最後までお付き合い頂きまして、誠にありがとうございました。

なろう、ネットの連載小説の投稿ほぼ初心者の自分にとって、色々と勉強させて頂きました。

途中PC壊れたり、歯の手術が決まったりとアクシデントもありましたが、一応完成していた作品でしたので、何とか定期的に投稿が続けられ最後まで連載ができて良かったです。

正直なところ、今作は私にとっては苦い作品ではありました。

個人的にバトルとか、コメディとか好きなので・・・ただ、執筆前にプロットを見せた友人に背中を押され思い切って書いてみたと言う経緯もあり、苦い作品であると同時に思い出深いモノとなりました。

クセと言うかアクの強い作品だと思いますが、こうして多くの方に読んで頂けたことを素直にうれしく思います。

続編とかもぼんやり考えたのですが、暗い話しになりそうなので、取りあえずこれにて完結です。

ご意見、ご感想、なろう投稿の仕方のご指導もお待ちしております。


今後はエッセイの戯れ言も再開したり、次の作品もある程度目処が立ったら連載で投稿を始めようかと思います。

既に出来上がっているモノをネット用に修正して短くても毎日投稿するか、完全新作を節で区切って定期的に投稿するか悩みどころですが・・・・・・。

まだまだ初心者ですが、出来るだけ間を開けずに次回作を投稿して行こうと思いますので、そのときはまたよろしくお願い致します。

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