初めての偵察
混沌とした雰囲気(とは言っても食堂は少人数だったが)の食堂から出たあと、風呂に入って(お決まりの「キャー!トヲルさんのエッチー!」みたいな展開にはならない。感覚で人の存在がわかるのだ。とはいえ、双子と王女が入ってきそうになったことには変わりはないが、転移と気合でなんとかした)自分の部屋に戻った。それにしても面倒くさいことになってしまった。はあ、俺に休息をくれ……。
いつの間にか朝だった。俺は脱却者の特性上寝ることはできないのだが、疑似的になら寝ることができる。というか、寝ないと心がやっていられないのだ(ユニは精神が強いから大丈夫だと言っていたが、そういう問題ではない)。そして俺は目の前で寝ている人物に声をかける。
「で、あの、よけて頂ける?」
俺は目の前で寝ているアリシアに声をかける。というか、精神が丈夫だからかちょっとやそっとのことでは驚かなくなったのだ。
「ふぁぁ、あ、トヲル様?おはようございます……。ええええ、何でここにトヲル様が!?」
「いや、それは俺が聞きたいんだけど……」
「はっ、やっとトヲル様が私をお認めに!!?え、ええ、私の準備はできておりますわ!!」
「いや、そんなことは一言も言っていないけど……?」
俺はベットから降りる。
「あ、トヲル様、、夜の営みは……?」
「あの、もう、朝だから」
食堂には俺含め六人が集まり朝食を食べていた。俺とアリシアの目が合うとアリシアが顔を赤くし、アノードとカソードが勘ぐるような視線を向けてきて、それを王と女王がニコニコ(ニヤニヤ)した目で見るというなんともいたたまれない空間ができていた。
そういえば、女王は結婚賛成派だ。とうとう賛成派と反対派が同数になってしまった。ピンチだ。
ある程度朝食を食べた後、王が話し出した。
「そうか、トヲル殿に、頼めば良いでは無いか」
不穏な雰囲気を察知。
「と、いうと?」
俺は尋ねる。
「なに、トヲル殿にスパイを頼むだけじゃ」
「あ、パスで」
どうせ六区の偵察に行けとでも言うのだろう。
「なに、偵察に行ってもらうだけじゃ。勿論六区にな」
当たりだ。少しはこちらの事も考えて欲しいものだ。
「いや、何故に俺が?」
王は当たり前というふうに言う。
「そりゃ、被害が出ないからじゃ。トヲル殿なら別にバレてもあまり問題無いじゃろう?」
どうやら俺の力は買ってくれているようだ。まあ、部下を傷付けられたく無いという気持ちは分からないでもないが、俺だって善良な一市民だ。
「勿論それ相応の返礼はするつもりだ。……トヲル殿のおかげで人がたくさん救われる。そう思って、やってくれぬか?」
そう言って王は頭を下げてくる。むう、そう言われては仕方が無い。
「分かったよ。いつからどうすればいい?」
「ほ、本当か?じゃあ、今からお願いしよう。善は急げじゃ」
「まずは朝飯食わせろ」




