現状はままならない
「フフフ……あなた達には正義の鉄槌が下るでしょう……。首を長くして待っていなさい……」
いや、「覚えてろ」のノリで言われても説得力がない。スタコラサッサと退散して行ったファブニールは置いといて、震えが止まっていない七区王と、呆然として見ているアリシアと、やはり当たり前と言った様な雰囲気を出している双子の元へ歩く。七区王、しっかり!
「あ、あの、トヲル殿……?少々乱暴が過ぎるのでは?」
「トヲルさんの事ですから……。まあ、これが当たり前なのでしょう」
「何でこれを受け入れられるって事はもう重症ね……」
おっと、それは聞き逃せない……まあいいか。ここで許せるようになったのも、もう手遅れだというサインかもしれない。
「ま、まあ……、何とかなったからいいんじゃない?」
「終わりよければすべてよし、ですね!カッコイイ!ああ、私の王子様!!」
「あの、言っておくけど、まだ結婚は許可してないからね?」
「「え?」」
親子揃って「え?」じゃねぇよ。お前ら、俺に人権が無いっていうのかよ。
「「婚約しろぉぉぉぉああ!!」」
俺の人権をどこかに落としてしまった模様。
お前の人権、ねえからァ!という声が聞こえる。ひでえ。
大波乱の修羅場も何とか乗り越えた。それで、今何をしているかというと、今日は城に泊めて貰えるらしいので、城の一室で夕食を待っていたのだ。貸し出された部屋はとても豪華でトイレや風呂までも付いている(とはいえシャワーは流石に無いのだが)。鍵も付いていて、有事の時も安心だ。まあ、俺にとっての有事は鍵のみで何とかなるわけが無い……アリシアとか夜這いに来ないだろうな……はっ、フラグを立ててはいかん、予定調和が……。
おっと、もう夕食の時間か。ローストチキンとか出ないかな。
食堂についた時には俺以外が全員席に座っていた。二十人ほど座れそうな長テーブルには七区王と王妃、アリシア、そしてアノードとカソードの五人がバラバラな場所に座っている。俺はどこの席に座ろうか迷った末に入り口側の席に座った。何故詰めて座らないのかという疑問は置いておこう。
沈黙が部屋を支配する。とても居心地が悪い。誰か話さないのか、などと考えていたら執事服とメイド服を着た男女が食事を運んできた。サラダやスープが出てきたところまでは良かったが、唐揚げが出されたときは思わず吹き出しそうになった。先輩転生者様々だ。頭が上がらない。前世の唐揚げはこの世界の王族にも親しまれているらしい。これだけを切り取れば普通の家庭の食事だが、他の食事が唐揚げの品を底上げしている。唐揚げ=ローストチキンの等式が成り立つのは、前世の食事、恐るべしということなのだろう。
ひとしきり食事が机に置かれたら、次は執事とメイドが音楽を流し始めた。しかも前世の洋楽、「September」だ。なぜこの曲が流れるのかと思ったが、この曲のアーティストの「Earth,Wind&Fire」という名前はこの世界の世界観にとてもマッチしている。とはいえ、九月という題名のくせに十二月の話をするのには異議を唱えたいのだが……。
しかし、現実とはうまくいかないもので、食事と音楽を楽しんでいたらまたも召使い的な人物が何事か急ぎながら食堂に入ってきた。
「大変です!!ろ、六区から、宣戦布告が!!」
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