打ち砕かれる希望と過去 SIDE:アノード
ドラゴンの咆哮が響き渡る。辺りは火の海となっていて、家が崩れていく。火傷を負った人々が叫び声をあげる。もう、ここまでですか……。自分の身体も動いているのが不思議なくらい傷ついている。しかし、諦める訳にはいかない。
ドラゴンが逃げ遅れた人々に向けて炎弾を放とうとする。それを私は小さな子供を逃がしながら詠唱し、雷魔法を放って阻止する。炎弾は消失したものの、ドラゴンがこちらに警戒して炎弾を放つ。また魔法を使って迎撃しようとするが、
(魔力が足りない……?)
ドラゴンの口から炎弾が放たれる。後ろにいたカソードが魔法を放とうとするが、彼女も魔力不足の様だ。私は死を覚悟する。走馬灯が走る。
私達は反転属性と呼ばれる雷魔法が得意で、両親からはよくもてはやされた。
反転属性というのは、基本の四大属性の炎、水、地、風を反転させたものだ。雷は風の反転属性だ。
反転属性がまず珍しかったので周りからもよく褒められたものだ。しかし、そんな幸せな暮らしも私達が十一歳の時に街を襲った集団暴走によって失ってしまった。両親を失い、引き取られたのがエミリアル家だったが、そこでの生活も罪スキルによって失ってしまった。
私達の名前は異世界で使われている、夜を彩る明かりの一部分に由来するのだそうだ。人々を明るくさせるようにと言う願いを込めて名付けられたのだそうだが、これでは名前負けだ。
そんな走馬灯と同時に、今日……昨日出会った男を思い出す。転生者にも類を見ない強さを持っていたあの男は「チート!」と謎の言葉を口走ってばかりいたが、変に物知りだった。あれも「ちーと」とやらの力なのだろうか?兎に角、あの男に頼ればドラゴンの一匹や二匹など軽くあしらっていそうなものだが、今回ばかりは頼る訳にはいかない。
などと考えていると炎の熱さで意識が現実に戻る。
もう、駄目か……。諦観の境地に至ったとき、ふと、夜の帳に薄い膜が現れ、私達を包むように守る。
「ごめん、待った?」




