運命の白馬の王子様、ゲットしたぜっ!!
最終話になります。
途中で区切れなかったため、長くなってしまいました。
クソ妹&クソったれ親父の断罪回でもあります。
そして、本命は意外な所に隠れてました。多分、皆様は彼の存在を忘れていると思います。
最終話の始まりダヨ!
ユーフィミアは王城からの突然の呼び出しに、嫌な予感がしていた。そしてそれは的中した。
謁見の間に案内されたユーフィミアの前に、苦い顔をした国王と王妃、呆れを隠さない王太子夫婦と、我関せずで明後日の方を見ている第二王子、昏い顔でうなだれている第三王子のアルミレオと、彼の腕に寄生虫のごとくひっついてにこやかに微笑むアレキサンドラがいた。
宰相と騎士団団長に挟まれて立っている父親はげっそりと痩せこけ、顔を真っ白にさせて今にも倒れそうだ。
この面子で、ユーフィミアは悟った。
ユーフィミアは最上礼で挨拶をし、国王の許可を得て口を開いた。
「婚約破棄でございますね?」
ユーフィミアの言葉に、アルミレオ王子は捨てられた犬のような顔で彼女を見た。だがユーフィミアは国王だけをまっすぐに見ていた。
「すまないが、オブライエン嬢。……その通りだ。責任は全て不肖の息子と、我々にある」
「そうですか。それは残念ですが、仕方のない事ですね。ですが、責任は…まぁ、どっちもどっちというところでしょうか」
「…君はなんだか、随分冷静だね……?」
王太子の言葉に、ユーフィミアはうなずいた。
「はい。婚約破棄はもう四度目ですので。社交界でも噂にも上らないほど、当たり前の事になってしまいました。第三王子殿下もこれまでの婚約者たちと同じだったのでしょう。妹が相手では仕方ありませんわ」
「違うっ!信じてくれ!私は嵌められたのだっ!!」
アルミレオの言葉に、ユーフィミアはうなずいた。
「ええ、そうでしょうね。四度目ですから」
「信じて…くれるのか?」
「信じるも何も、我が家の影からアレキサンドラが懇意の薬屋から媚薬を買ったと、報告が届いております。ちなみにその領収書もございます。我が家では買い物をしたら領収書をもらうように言いつけておりますので。日付もバッチリ入っております」
ユーフィミアの斜め後ろに控えるデキる執事ロウネルが、どこからかサッと書類を差し出した。
「殿下の他にも、私の三人の婚約者たちにも惚れ薬や媚薬の類を飲ませていますね」
ロウネルが三枚の書類を差し出した。
全員の冷たい目がアレキサンドラに突き刺さった。
アルミレオは腕を振り払ってアレキサンドラから離れた。
「それから、タウンハウスのメイド達から、アレキサンドラが処女ではないことも報告を受けておりますわ。十一歳の時に寝具にバッチリと証拠が残っていたそうです。もちろん、関係をもった男性もリストアップしております」
ロウネルが分厚い書類を差し出した。
アルミレオが嫌悪の顔でアレキサンドラを睨みつけた。
「お前……よくも私を騙したな……!」
処女を奪ってしまったために責任を取れと迫られたのだが、当のアレキサンドラはすでに経験済みだった。しかも提示されたリストはとんでもなく分厚い。あの日、シーツに残った血痕を見て絶望に追いやられた分、アルミレオの怒りは相当なものだった。
「え?え?な、なんで……?」
なぜ姉がそんなことを知っているのか、アレキサンドラは不思議だった。
アレキサンドラは忘れていた。――というより、どうしようもない頭カラッポの馬鹿だった。
ユーフィミアは父に代わって領地経営をしているのだ。れっきとした領主代行である。そして当然ながらオブライエン家の全権もとっくの昔に掌握している。
さらに言えば、ユーフィミアは領地の仕事が忙しくてシーズン中に王都に行くことは難しいが、社交はしているのだ。社交シーズンが終わった後、領地のカントリーハウスに戻ってきた貴族達と商談のために会っている。そこで王都で話題の噂話を奥方やご令嬢、その家の使用人たちから色々と聞かされるのだが、まぁ、アレキサンドラの評判の悪いことこの上ない。
姉の婚約者を平気で奪う尻軽女、男を追いかけてばかりの節操なし、学園のテストはいつでも万年赤点の落ちこぼれ、歩く広告塔(ついでに似合ってないそうだ)、詐欺師のいい鴨…………等々。
姉の裏の行動を知らない(興味ない)アレキサンドラは、そこに頭が回っていない。誰か説明してもらえないかと周囲を見回すが、全員が軽蔑した目で睨んでいた。壁際に立っている衛兵たちも冷たい視線を投げかけてくる。
父親は唖然としていた。この娘にしてこの父あり。最愛の娘の問題行動に気付いていなかった。
ユーフィミアはそんな二人を呆れ顔で眺めつつ、ため息をついた。
「なんでって……アレキサンドラ、貴女、問題行動が多すぎるんですもの。
社交界でもいい笑い物よ。商談でお邪魔した家の奥様やご令嬢方から、貴女の素行の悪さを聞かされて恥ずかしかったわ……。ご令息方は婚約話の「こ」の字が出ただけで、別の女性を探してきてソッコーで婚約なさったそうよ?
男性もとっかえひっかえしていた事も聞かされたわ。一時期はとある男優に入れ込んで随分貢いだそうね?
おまけに散財の度が過ぎてる。週に一着はドレスを作らせているし、宝石も随分買いあさったみたいね。領地に届けられる請求書の束を見て、開いた口が塞がらなかったわよ。もちろん一ゴールドも払ってないけどね。自分で買った物なのだから、自分で払いなさい。
そうそう、貴女が買った宝石の半分は偽物か、価値のない不良品だそうよ。
そんな貴女に監視を付けるのは当然でしょう」
「え!?なんで払ってくれないのよ!!」
「毎月のお小遣いがあるでしょう。それで買いなさいよ。
領民たちが稼いでくれたお金は、私達の物じゃないの。必要経費を差し引いた中から、我が家の取り分があるのよ。それくらい常識でしょ。
ああ、そうそう。請求締切が迫っていた分は代わりに貴女の信託預金分のお金から出しているから」
「はぁ!?いくらお姉さまでも、わたくしの預金に手を出せるわけないじゃない!」
「ええ。貴女名義の預金には全く手を付けていないわ。貴女の預金に回す分のお金から出しているの。口座の中のお金は貴女のものだけど、口座に入る前のお金はそうじゃないもの。だから、貴女の持参金は全然増えていないわよ。嫁ぐとき大変ね?」
ロウネルは大きな紙箱を五つ、その場に重ねた。中はすべて未払いの請求書である。アレキサンドラは池の魚のように口をパクパクさせた。
アレキサンドラの傍に立っていたアルミレオは、はるか遠くに離れた。
「あ、そうでしたわ。お父様のこともすでに調べは付いております。私が王宮に提出した帳簿を改ざんして、実際の収入額を少なく書き直しておられましたね。本来ならば国に納めなければならい筈の税金との差額分が、どこに消えたのかも把握済みでございます。
もちろん、司法局にすでに被害届と関係書類を提出しています。控えももちろんございます。きちんと罪を償ってくださいね」
ロウネルが分厚い書類をまとめたファイルを差し出した。同じものを宰相も取り出す。すでに報告を受けていたらしい国王と王妃、王太子が揃って大きくうなずいた。
父親は天を仰いでその場にがっくりと膝を付いた。隣に立っていた騎士団長が素早く後ろ手に手枷をはめる。
父親はアレキサンドラの散財で払いきれなかった分を、誤魔化した税金の差額分から埋め合わせをしていたのだ。つまり脱税である。
「そう言えばアレキサンドラ。貴女付きの侍女から報告が来てるわ。もう半年以上、月のものが来てないそうね?」
アレキサンドラは何かを思い出しつつ、指を折っていく。そして顔からサーッと血の気が引いた。
「最近ちょっとお腹周りが太ったとか侍女に言っていたそうだけど、間違いだからね?
あと何ヶ月で子供が生まれるか、その子がどんな容姿かで、第三王子殿下の御子かどうかすぐにわかるでしょうね。
それにしても貴女、大胆なことをするのね。王族の方に毒を盛るだなんて」
「なっ!?毒なんて盛ってないわっ!!ワインに入れたのは、ただの媚薬よ!!」
顔を真っ赤にして抗議するアレキサンドラに、ユーフィミアは深いため息をついた。
国王一家と宰相、騎士団長、壁際の衛兵たちの目つきが一段と厳しいものになる。
「これだから馬鹿はどうしようもないのよね……。
あのね、アレキサンドラ。どんなに体にいい薬でも毒になることもあるのよ。ましてや貴女、ワインに媚薬を入れたってたった今、自分で言ったわよね?もうその時点で、王家転覆罪、王族不敬罪、国家反逆罪、殺人未遂罪、それと強制姦淫罪に名誉棄損…………まぁ、色々やっちゃってるわね。
救いようもない、本物の馬鹿よ。馬鹿につける薬は、この世にないの」
ユーフィミアは肩を竦めて首を横に振った。アレキサンドラはその場にヘナヘナと崩れ落ちる。父親は項垂れ、何やらブツブツとつぶやいていた。もうこれでいいだろう。好き勝手やっていた父と妹は自滅した。
満足したユーフィミアは毅然と国王を見上げた。
「恐れながら、国王陛下。
私の父と妹が大変な罪を犯しましたこと、この場にて謝罪申し上げます。
我がオブライエン家は王国と王家に忠誠を誓っております。今回の件に関するすべての捜査に全面的に協力申し上げます。そして父には速やかに家督を移譲してもらい、しかるべき場所で隠居していただこうと思っております」
「よかろう。そなたの忠誠、しかと受け取った」
「寛大なお心に感謝申し上げます。
そして図々しいとは重々承知しておりますが、我が家の系譜からアレキサンドラ・ブリジット・オブライエンの名を抹消することをお許しいただけますでしょうか?
その者は、我が家とはまったくの無関係でございます」
「許す」
ユーフィミアは国王に静かに頭を下げた。
アレキサンドラの悲鳴が聞こえたが、すぐに衛兵に取り押さえられ、薄汚い布を口に詰め込まれた。
「では、最後にアルミレオ第三王子殿下」
ユーフィミアは悲しい顔でアルミレオを見つめた。
「私は殿下と婚約できましたこと、心より喜んでおりました。ですから婚約破棄という結果になってしまいましたことを、誠に残念に思っております」
「ユーフィミア……私は嵌められたんだ……。どうかやり直させてもらえないだろうか…………?」
「いいえ、殿下。過程がどうあれ、結果は変わりません。殿下が婚約者である私の妹と関係を持ったことは、すでに社交界に広まっているのです。もうどうしようもないのです」
ユーフィミアが首を横に振ると、アルミレオは唇を噛んで悔しそうに拳を握りしめた。その姿に悲しみを抱きつつも、ユーフィミアは国王を見上げた。
「此度の件、国王陛下と王妃様、王家の皆様に大変なご迷惑をおかけいたしました事を深くお詫び申し上げます。
元凶は元妹ではありますが、それを野放しにしていた父にも、そんな父を諫めなかった我がオブライエン家にも責任がございます。
第三王子殿下との婚約破棄を謹んでお受けいたします」
ユーフィミアの言葉に国王は深いため息をついた。
「オブライエン嬢、誠に残念だ。才媛と名高いそなたを義理の娘にできることを、余は楽しみであった。だがこうなっては仕方あるまい……。アルミレオも良いな?」
アルミレオはそれに答えを返すことはできなかったが、美貌のご尊顔をくしゃくしゃにさせて俯いている姿が全てを物語っていた。
「宰相」
「は」
「すぐに手続きを。それと罪人には一切の加減はいらぬ」
「かしこまりまして」
宰相は一礼すると、父親を引きずった騎士団長と、衛兵に取り押さえられたアレキサンドラとともに謁見の間を退出した。後味の悪い断罪劇だったなぁ、とユーフィミアは閉まっていく扉を見ながら心の中でため息をついたのだった。そこへ国王が声をかけた。
「ところで、オブライエン嬢」
「はい、何でございましょうか?国王陛下」
「そなた……見合いをせぬか?」
「お見合い、でございますか?」
「うむ。そなたは此度で四度も婚約を破棄されておる。不肖の馬鹿息子のせいで、そなたの名誉に傷がついてしまった。今後、そなたに良縁が来るのは難しかろう。せめてもの詫びとして、余が信頼できる良い人物を紹介させてはくれまいか」
「お心遣い感謝いたします、陛下。ですが……申し訳ありませんが辞退させていただきます。四度も婚約がなくなってしまったのです。さすがに私も辛いものがございます。今しばらくは一人で考えさせていただきたく、お願い申し上げます」
「……そうか…………そうだな。性急であったな。すまなんだ。
だが気が変わったらいつでも声をかけなさい。力を貸そう」
「もったいないお言葉でございます」
ユーフィミアは深く頭を下げた。
王都から領地へ戻ってきたユーフィミアは、ゆっくりと馬車から降りた。玄関前に並んで主の帰りを待っていた使用人たちは、元気が――モリモリに有り余っている様子のユーフィミアを見て、満面の笑みで出迎えた。
「みんなぁ~~~!やっと、やっと、クソ親父とアバズレ女を断罪できたわよ~~~!!」
ユーフィミアが勝利のVサインを天高く掲げると、使用人たちは大きな拍手をした。
「そして見て!陛下の御厚意で、私の運命の王子様も一緒よ!!!」
馬車を引いていた白馬を披露すると、
「おお~~~っ!」
「さすがですわ、お嬢様!」
「念願叶いましたね!」
と口々に祝いの言葉をかけてくれた。
そうなのだ。
あの日、ユーフィミアが一目惚れした運命の王子様は、白馬に跨っていたアルミレオ王子ではなく、彼の愛馬だった白馬のプリンス号の方だったのだ。
文字通り、白馬のプリンスであった。
国王が詫びに慰謝料を支払うと言ったのを断り、代わりに運命の王子様をもぎ取ってきた。彼を手に入れるためなら、オマケに第三王子がくっついてくるのも仕方ないと諦めていたのだが、やはりこの世界には、捨てる王子がいれば拾ってくれる国王がいるのだ。
本命をゲットできたことに、ユーフィミアの顔は緩みっぱなしだった。
ついでに父と妹も捨ててこれたので、万々歳である。
「ユーフィミア!」
「イグニス!」
使用人たちの中から一歩前に出てきた青年に、ユーフィミアは駆け寄って抱き着いた。二人は再会を喜び合ってキスすると、ギュッときつく抱きしめあった。集まっていた使用人たちは温かい拍手で二人を祝った。
…………ところで、彼の事を覚えておりますでしょうか?
実は第一話の最後の部分で、チョロッとだけ名前が登場しております。
99.9999%、頭の片隅にも残ってはいないと思いますが、デキる執事ロウネルの後継者で半人前な執事見習いのイグニス君であります。ここで彼を少しだけ紹介させていただきます。
≪ステータスオープン≫
名前:イグニス・ランバート
年齢:二十四歳
種族:人間(ハクセン王国には人族しかおりません)
特徴:チョコレートブラウンの髪、榛色の瞳、長身のイケメン
職業:オブライエン家の半人前な執事見習い
レベル:ジャンルが違うので存在しません
HP:同上
MP:同上
素早さ:多分、普通
運:ドリームジャ〇ボ宝くじで組番違いを当てるくらいの強運
スキル:ユーフィミアと両想い(アルティメットスキル)、ユーフィミアの幼なじみ(レアスキル)、没落した元子爵家嫡男(普通スキル)、オブライエン家の住込み使用人(個室持ち)
実家が没落しちゃったので、幼馴染のユーフィミアがいるオブライエン家で半人前の執事見習いとして働いているが、ステータスをご覧になってお分かりの通り、元は子爵家の嫡男だった青年だ。実家は領地も爵位もすでに手放してしまっているので、彼の今の身分は平民である。
ユーフィミアの本命は彼だった。
「あのね、国王陛下から『困ったら力になるよ』って言質をいただいたの!だから、身分違いのイグニスと結婚できると思うわ!」
「本当に!?」
「大丈夫!何かあったら脅すから!」
コラコラ、一国の王様を脅すとか怖いことを言ってはいけません。
だが、両想いの恋人とようやく結婚できる(かもしれない)喜びと、念願の白馬のプリンスを手に入れたユーフィミアは有頂天だった。このために、どうでもいい男たちと我慢して婚約を結び、邪魔なアレキサンドラと父親に煮えたぎった油をぶちまけて叩き落したのだ。第三王子と婚約したのは白馬のプリンス君をそばでうっとり眺めたいがためだったが、瘤がなくなって大変満足のいく結果が得られた。
長年の恋人と、運命の白馬の王子様の両方を手に入れられたのだから。
色とりどりの花が咲き乱れるオブライエン家の庭に、明るい笑い声が響き渡った。
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第三王子との婚約破棄から一年後、国王から(強引に)許可をもぎ取ったユーフィミアは、領地内の教会で幼馴染だったイグニスと結婚式を挙げた。使用人や領民たちが集まった、賑やかでアットホームな結婚式だった。
式の後の披露宴では特産の苺をふんだんに使ったフルコース料理やスイーツが振る舞われた。普段から苺を食べまくっている領民たちは、文字通り胸やけしたそうだ。しばらくは領地内で苺の消費量が減り、代わりに加工品が例年より多く作られるようになった事は、余談である。
二人はたくさんの子宝に恵まれ、オブライエン家はますます繁栄した。
主夫婦の子供達に囲まれたデキる老執事ロウネルは、遊び相手をせがまれて毎日のようにギックリ腰になったという。
第三王子に媚薬を盛ったとして牢に入れられたアレキサンドラは、断罪劇から二月もしないうちに産気づき、黒髪に薄茶色の目をしたやたらと元気な女児を出産した。明らかに周期が合わない妊娠と、生まれた子供がこれっぽっちも第三王子に似ていない事から、アレキサンドラには虚偽罪も加わり、永久国外追放となった。学園は退学処分よりも重い、除籍処分になった。男子生徒たちはストーカーがいなくなったことを喜び、女生徒たちはアバズレがいなくなったことに歓声を上げ、学園には清々しい青春の風が吹き抜けたという。
その後、アレキサンドラの痕跡はぱったりと途絶えた。彼女がどうなったのかは、誰も知らない。
女児は子供のいないとある貴族の養女となり、実母とは正反対の貞淑で生真面目な女性に成長した。あまりにも生真面目すぎて、婚期を逃してしまったそうだ。
父親は脱税の罪で裁かれた。追徴金とアレキサンドラの爆買いの支払いをポケットマネーから出させられ(ユーフィミアが「自分のケツは自分で拭け!」と言って見捨てた)、無一文になった。
父親が払いきれなかった分は、系譜から削られた透明人間の信託預金全額をつぎ込んだが、元々少なかった事もあってすべてを払うことができなかった。
その分は、オブライエン家が立て替えているが、父親にはしっかりと耳をそろえて返してもらう。そこに一切の同情も手加減も心配りも、親子の情すらもない。
金の切れ目が縁の切れ目、とは昔の人はよく言ったものだ。
出所後、故郷のオブライエン領地に戻った彼は、かつての部下だったロウネルにネチネチと嫌味を言われ、領民たちにしごかれながら苺栽培に従事しつつ、地道に借金を返している。
ユーフィミアの元婚約者だった四人は、約一名を除いて全員が女性不信になったという。
その約一名は別の道に目覚めたらしく、フリルとレースがたっぷり使われたドレスを着て、毛むくじゃらの熊のような男性との新婚生活を楽しんでいる。
第三王子は王位継承権を放棄し、騎士として一生を国に捧げた。彼は二度とワインを飲まず、白馬にも乗らなかったそうだ。
めでたし、めでたし。
―――追記―――
ユーフィミアに引き抜かれていった白馬のプリンス君は、オブライエン家の牧場でハーレムを築いたそうだ。奥さんたちは皆仲良しで、たくさんの仔馬も生まれた。父親にそっくりな白馬が生まれると、飼い主のユーフィミアが鼻息を荒くしてストーキングする問題に、馬丁たちは頭を抱えた。
いい加減に飼い主がウザくなったプリンス君は馬糞のバックキックが上達したそうだが、ユーフィミアは全ての攻撃を余裕で避けたという逸話が残っている。
ノリと勢いで書きました。そしたら、棺桶に片足突っ込んでるはずの老執事が、スーパー執事になっていました。
なお、謁見の間には荷物等の持ち込みは禁止です。手ぶらで入室したのに、スーパー執事さんはどこから書類や箱を取り出しているのか、その辺は考えないでください。
ちなみにギックリ腰をどうやって二日間で治したのか質問してみましたが、「作者の意向です」と責任を押し付けられました。
作者は、何もいたしておりません。ポチポチとキーボードを打っていただけでございます。気になっても、スルーして下さい。作者に一切の責任はございません。
ご都合主義ですので。
最後までお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました。