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白馬の王子様に恋をしました  作者: 乙茂内カズラ
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ユーフィミアは頑張った!今までで一番頑張った!!

第二話になります。

ユーフィミアは本当に頑張りました。その頑張りを温かく読んでいって下さいませ。


よろしくお願いします。



 ユーフィミアが領地で忙しい毎日を送っている頃、王都のタウンハウスではアレキサンドラが散財を楽しんでいた。お茶会やパーティーに招待されるたびにドレスを新調し、宝石を買いあさる。父親は「欲しい」と言えば何でも買ってくれるので、いつでも流行最先端のドレスを身につけている。そんなアレキサンドラはファッションマネキンとして社交界で話題になっている。それが彼女の自慢だった。田舎でもっさいお古のワンピースを着ている姉とは違うのだ。

 もちろん、それらの請求書は領地の姉の元に送っている。必要経費なのだから、アレキサンドラの小遣いではなくオブライエン家で支払うべきだと、父が言うので素直に従った。

 そして領地からなかなか出て来られない姉に代わって、姉の婚約者と交流を深め――奪い取るのだ。いや、アレキサンドラには奪っているという自覚はない。彼らが勝手に彼女を好きになるだけだ。アレキサンドラは彼らのプロポーズを受け入れるだけである。自分は何も悪くない。婚約破棄を言い渡される姉がモテないだけだ。




 ユーフィミアが過去三人の婚約者たちに婚約破棄をされた時、彼らは決まってこう言った。


「ユーフィミア、申し訳ない。僕は(俺は、アタシは、)アレキサンドラと運命の恋に落ちてしまった(の)。悪いが、君との婚約はなかった事にしてほしい(わ)。すまない(ごめんなさいね?)」


 ―――若干一名、ちょっと違う感じの人物がいたような気もするが、ユーフィミアは婚約者三人に連続でフラれた。本音を言えば、三人目との婚約破棄は諸手を挙げて喜びたかったが、こうも妹に邪魔ばかりされると、いい加減ウザい。

 だが彼ら(約一名が微妙だが)がアレキサンドラになびくのも仕方がない。

 アレキサンドラは亡き母譲りの金髪に大きな翠の目をした可憐な少女なのだ。小柄だがボンキュッボン体型で、庇護欲を駆り立てられる小動物のような可愛らしさがある。さらに話題が豊富で話し上手に聞き上手、誰とでもすぐに打ち解ける人懐こい性格だ。性格最悪のぶりっ子で同性には嫌われているが、男受けはすこぶるいい。

 対してユーフィミアはよく言えばミルクティー色、悪く言えばくすんだ金髪に菫色の瞳をしている。切れ長の目がミステリアスな中性的な顔立ちをしている。跡継ぎとしての英才教育を受けているので、そこいらの令息たちよりも頭がいい。

 ハクセン王国では十五歳になった貴族令息・令嬢は王立学園に入学する慣例があるが、ユーフィミアは通っていない。幼いころから受けていた英才教育で、学園で習うべき内容をすでに身につけていたため、通う必要がなかったのだ。入学試験と卒業試験を同時に受けられる特別テストに合格し、入学と同時に卒業している。

 並の男性より身長も高く、スレンダーな体格で剣術も乗馬もたしなむため、男性よりも女性に人気がある。

 この辺はちょっと――いや大分というか、かなり深刻に複雑だ。女性にモテてどうする。

 ちなみに趣味は乗馬と、恋愛小説を読むこと。後者の趣味は恥ずかしいので、お堅い専門書の表紙をかぶせて隠している隠れ乙女である。専属侍女達にはバレバレで、生温かい目で見守られているのを、本人だけが気付いていない。

 男性より女性にモテるせいなのか、アレキサンドラの性格が最悪すぎるのかは分からないが、三人の婚約者に連続でフラれるとさすがに凹む。自分には男性を振り向かせる魅力がないのだろうか。

 もちろん、責任は相手方にあるので慰謝料はガッポリと貰っているが、世の中にはお金で解決できないこともあるのだ。

 そうは言っても結局、世の中最後はお金でしょ、なのだが。

 そんな落ち込んでいる時に、ユーフィミアは運命の出会いを果たしてしまったのだ。


 ―――これは絶対に逃がしたらあかん!


 ユーフィミアは燃えた。

 何せ、相手は運命の王子様なのだ。これを逃したらもう立ち直れない。


 ―――今に見とれよ、アレキサンドラァァアアァァッ!!


 闘志を胸に、猛烈に頑張った。




 アルミレオ王子は、第三王子という忙しい身だというのに、十日もオブライエン家に滞在してくれた。その間、仕事の話をしつつも領都を案内してみたり、果樹園にお弁当を持ってハイキングに行ったり、馬で遠駆けにも出かけた。

 運命の王子様は、素晴らしい理想の王子様だった。

 もちろんギックリ腰から二日で回復した執事のロウネル、使用人たち、領民たち全員の最大出力バックアップ&サポートがあった。

 いつもは化粧もせず、汚れてもいいワンピースに泥だらけの編み上げブーツ、麦わら帽子をほっかむりしていたユーフィミアだが、王子滞在中は常に薄化粧をし、最先端の流行を取り入れたドレスを着てボンネットをかぶるというお洒落姿で頑張った。動きにくくてイライラしたが、借りてきた猫を数十匹かぶって頑張った。

 いつもなら苺を詰め込んだ木箱五箱を平気で持ち上げるユーフィミアだが、農園を案内中はうずうずする衝動を、ワキワキと動いてしまう手を、頑張って抑えつけた。変な動きになりそうなのを、さりげなく「こちらをご覧ください」と手で差し示す事で隠しきった。

 そのおかげか、アルミレオ王子との距離はグンと近くなり、王子が王都へ帰る頃には文通をする約束まで取りつけた。

 ユーフィミアは頑張った。

 そして、頑張った努力は報われた。

 王都へ戻った第三王子は、父である国王にオブライエン侯爵領の窮地を報告し、自らが率いる第五騎士団によって盗賊を殲滅させた。また、新たな盗賊が森に棲みつかないように、問題の森を開墾して騎士団の駐屯地まで作らせた。このおかげで王都との行き来もスムーズになり、オブライエン家はさらに潤った。

 アルミレオ王子は頻繁に手紙や贈り物を届けてくれ、駐屯地の視察のついでにと、ユーフィミアに会いに来てくれた。二人は仲を深め、やがて内密に婚約を結んだ。

 老執事のロウネルも使用人たちも領民も喜んだ。

 何せ相手は第三王子である。これ以上ない好物件だ。しかも優秀で、結婚後は公爵の地位を賜りながらもオブライエン家に婿入りしてくれるというのだ。

 残りものに福はあった。捨てる(クズ)がいれば、拾う()がいた。釣り上げた魚は、とんでもなく大きな高級魚だった。

 努力が報われたユーフィミアは、大いに喜んだ。



 だが、そうは問屋が卸さなかった。



 婚約の破壊神アレキサンドラの存在である。内密に結んだはずのユーフィミアとアルミレオ王子の婚約の情報をいち早くつかんだ彼女は、さっそく行動に移すことにした。

 アレキサンドラは女性にやたらとモテる地味な姉が、第三王子という婚約者を持ったことが許せなかった。彼女にも父親が持ってくる縁談がいくつもあったのだが、婚約に至ったことは一度もなかった。父親同士で婚約を決めても、肝心の相手が契約書にサインするよりも早く婚約者を見つけてくるのだ。時にはさっさと既成事実を作ったりする。何故ここまで婚約が滑るのか分からないが、婚約者は自分で釣りあげた方が旨味はデカい。

 彼女は十六歳。今年デビュタントを終えて、本格的な婚約者探しを始めたが、満足のいく物件はなく、さらに相手側から断られること十数回。焦りからイライラしている所に、姉の婚約話が舞い込んできたのだ。しかも相手はこの国の第三王子。美貌の軍人。将来は臣下に下るというのが気に食わないが、今までで一番の大物である。


 ―――これを奪わずして何とするっ!女が(すた)るってもんじゃぁぁぁぁぁっ!!


 アレキサンドラも燃えた。

 絶対に姉から婚約者を奪い取ってやる!どうせユーフィミア(もっさい姉)は王都には来ない。婚約者の妹という特権をフル利用(スロットル)して、第三王子(お宝)を手に入れてみせる!

 アレキサンドラも頑張った。

 父親の権力を使って(濫用して)第三王子が出席するパーティーやお茶会の招待状を入手し、全てに出かけて行った。そして将来の義妹として振る舞いながらも、自分の美貌を武器にずんずんと距離を縮めていった。時に待ち伏せして、王都を巡回していたアルミレオ王子と偶然を装って出会い、一緒に歩いて回った。

 もはやストーカーだった。

 それ以上に仕事の邪魔だった。

 さすがにこれには父親も黙ってはいなかった。第五騎士団から「仕事の邪魔。職務執行妨害でしょっ引いてもいい?」と言われ、アレキサンドラに注意をしたのだ。人生で初めて、目に入れても痛くないほどに可愛い下の娘を叱った。

 父親に生まれて初めてやんわりと優し~く注意されたアレキサンドラは、大きな翠の目から、ポロポロと涙をこぼした。


「お父様、わたくしはお姉さまのためによかれと思ってしたのですわ。お姉さまは領地から滅多にお出になられないから、婚約者様とあまり仲良くできませんでしょう?ですから、わたくしが代わりに仲良くして、お姉さまのお話をたくさん教えして差し上げたかったの」


 可愛い下の娘の健気な言葉に、父親はじ~んと感動した。確かに遠く離れていては、ユーフィミアの事などろくに知れないだろう。何て優しい娘なんだ、と胸を熱くした。


「そうか。お前は姉想いの優しい子だね。でも、アルミレオ殿下のお仕事の邪魔をしてはいけないよ。わかったね?」

「はい、もちろんですわ」


 アレキサンドラは涙を拭いて、にっこりと微笑んだ。

 父親はこの時、もっと冷静になっていれば、と後に深く後悔することになる。

 それからもアレキサンドラはパーティーに出かけて行っては第三王子に近づいた。巡回や演習に出かける王子にひっつき虫のごとく付いて回る事はしなかったが、行く先々に出没した。

 完全に立派なストーカーである。

 しかしアルミレオ王子はこれまでの姉の婚約者たちと違って、彼女になびかなかった。業を煮やしたアレキサンドラは、最後の手段に出ることにした。あるパーティーで王子の飲み物に媚薬を混ぜ、具合が悪くなった所を介抱する振りをしながら休憩室に連れ込んだのだ。

 企みは、見事に成功した。

 そして、ただ一度の関係で妊娠したのだった。



次で最終回になります。ちょっと……大分?長目かもしれません。

クソ妹とクソったれ親父に断罪を!


明日の正午までお待ちください。

もしその間、お暇でしたらブクマと☆ポチしていただけると、大変うれしいです。

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