第9話 ストア
ログハウスに帰って来た。
僕は、〈精神を安定させる湧水〉を飲んで一息付いた。この湧水の効果は分からないが、とりあえず飲み続けている。
依存性のないことを祈ろう。
手元の、腕甲を見る。トロールからのドロップアイテムだ。
「これ、どうしようかな……」
祖母は、これを加工していたのだと思う。
だけど、自分に出来るのかが分からない。最低でも、炉が必要なはずだ。
このログハウス内にあるのだろうか?
「これは、古物商に売りに行けないよな……」
素材は分からないが、貴金属ではないと思う。作りも精工であり、映画の小道具と言えば通じるかもしれないが、価値はないと思う。何より、出所を聞かれたら答えられそうにない。
『それでは、〈ストア〉を使ってみましょうか』
ん? サクラさんからの意外な提案であった。
ストアか、祖母の手紙を取った時に聞いた言葉だな。
『まず、ステータス画面を開いてください。そして、スキルの〈ストア〉をタップしてみてください』
『ステータス』
今日は、声に出さなかったが、目の前にステータス画面が現れた。
そして、〈ストア〉をタップする。
ステータス画面が変化し〈販売〉〈購入〉の項目になった。
『〈販売〉をタップして、画面に腕甲を入れてください』
サクラさんの言うとおりにする。すると、腕甲は、画面に吸い取られた。
ステータス画面が変化する。〈査定中〉と出たのでしばらく待つ。
一分くらいだろうか。査定結果が出た。
「一万ゴールド? お金の単位が違いますね」
『ゴールドは、ストアのみで使用できるお金になります。元の世界では使えません』
ふむ……。まあ良いや。『はい』をタップして売却完了。
とりあえず商品を見てみるか。
今度は、〈購入〉をタップする。
商品のカテゴリーが出た。
一番気になった、〈薬品〉をタップして、スクロールしてみる。
・薬草:百ゴールド
・ポーション:千ゴールド
・ハイポーション:一万ゴールド
・フルポーション:十万ゴールド
・エリクサー:千ゴールド
・エーテル:千ゴールド
・万能薬:一万ゴールド
・短期間睡眠薬:千ゴールド
・聖水:五千ゴールド
・パナケイヤ:十万ゴールド
・体力の薬:一万ゴールド
・走者の薬:一万ゴールド
・解呪〈石化〉:一万ゴールド
・薬丹:百万ゴールド
etc
「ゲームみたいだな。でも名前から効果の分かるのはありがたいかもしれない。〈称号:解読師〉の効果かな?
タップすれば、詳細が見られそうだけど、今は良いや」
『今は、薬品は不要ですね。それよりも食事の欄を見てください』
今度は、〈食事〉をタップして、スクロールしてみる。
・おにぎり:百ゴールド
・オートミール:千ゴールド
・高カロリーレーション:千ゴールド
・お弁当〈梅〉:千ゴールド
・お弁当〈竹〉:一万ゴールド
・お弁当〈松〉:二万ゴールド
・麺料理:二千ゴールド
・丼定食:五千ゴールド
・ステーキセット:三万ゴールド
・コース料理:十万ゴールド
etc
「なるほど、遠出するのであれば、便利かもしれないな。輸送の問題も解決出来るし」
『あ、忘れていました。宝物庫に水筒とマジックバッグがあります。それと、双剣と冠を装備してください』
・魔法の水筒……大量の液体を納めることが出来る。時間停止機能あり。
・マジックバッグ……容量無制限の魔法のバッグ。時間停止機能なし。
・陰陽剣……一対の双剣であり、魔力を送れば、岩でさえ両断出来る。投げれば、目標を必ず切りつける。
・金霞冠……金光の霞が立ち込めて姿を消すことが出来る。索敵無効化。
ふむ。便利そうなアイテムだな。宝物庫に移動して、装備する。それと、一応仮面も持って行く。
『それと、貴重品ですが、〈帰還石〉を一つ持って行ってください。石を割れば、すぐにこのログハウスに転移出来ます』
「貴重品? 数に限りがあるのですか?」
『今のところ十個です。優莉さんのレベルが上がれば、新しく作れるでしょうけど、当分は無理ですね』
帰還石か。なるべく使わない方向で行こう。
『準備は万端ですね。それと、最後にブーツの使い方を説明しますので、外に出てください』
必要な物は揃ったのかな。しかし、ブーツ? 先日選んだ物だが、これにも何かしらの効果があるのか?
外に出て、まず水を水筒に水を汲んだ。見た目の容量以上に水が入るものであった。
これで良いだろう。
「ブーツの説明をおねがいします」
『そのブーツは、〈風火輪〉と言って飛べます。風と火を操る物です。意識を集中して浮かぶイメージを持ってください』
便利そうだな。ブーツに意識を集中してみた。
すると、風と火が生み出されてわずかに浮くことが出来た。ただし、飛ぶのは相当練習が必要そうだ。
『今は、それで十分です。空中で方向を転換するのに使用してください。
それと、ステータスを開いて、ステータスポイントを割り振ることを忘れずに』
はい、忘れていました。
ストアの画面を戻し、ステータス画面を表示させる。
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名前:二階堂優莉
レベル:248
筋力:30%(+10%) 体力:30%(+10%)
速度:25%(+5%) 知力:25%(+5%)
防御力:30%(+1%) 魔力:未開放
魅力:50%
スキル:言語理解、魔導具所持、ストア、恐怖耐性
称号:異世界人、解読師、道士、異界の顧客
残りステータスポイント:0
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八卦衣があるので、攻撃力を少しだけ重視してみた。
ここで思う。
「サクラさん。レベルの上限はありますか?」
『一応、999が上限です。ただし、個人によって上限があります。優莉さんの上限は教えられません』
全部75%にするのには、残りステータスポイントが260必要か。レベル600を目指そう。
それと、個別項目があったから、全部75%にした後は、個別項目に振って行くのだろう。
だけど、僕のレベル上限が600に届くのか、疑問が残る。
戦闘するのであれば、ステータスの振り分けは考えないといけないな。
極振りが良いのか、全部75%が良いのかも分からない。
でも、それも、魔導具次第で決まる……か。