第47話 襲撃2
僕はログハウスへの帰路に着いていた。
ここで聞いてみる。
「サクラさん。大地の精霊は、突然現れたのですか?」
『いえ……。人族の土地でずっと眠っていました。それはもう、数百年単位で。
たまに起き出して、災害を発生させていたのですが、今回は危なかったです。
飢餓状態まで追い込まれて、神樹を取り込もうとしていました』
「精霊に知性はないのですか?」
『個体差がありますね。 長く生きているだけでは、知性は生まれません。それこそレベルや進化に依存します』
「霊王がいるのですよね? 千渉はしてこなかったのですか?」
『霊王の管轄外の精霊ですね。咎めることは出来ませんよ』
ふむ……。魔物の次は、精霊か。
安定には、程遠いな。
◇
ログハウスに帰って来た。
今日はもう日が傾いている。まだ時間がると言えばあるが、メルク連邦まで行くと、戻って来るのが夜中になってしまう。
魔物狩りをしても良さそうだが、今日は休むことにした。
「ステータス」
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名前:二階堂優莉
レベル:602
筋力:30% 体力:30%
速度:46% 知力:30%
防御力:30% 魔力:未開放
魅力:50%
スキル:言語理解、魔導具所持、ストア、恐怖耐性、
投擲、探索、気配遮断、飛行感覚(NEW)、異性耐性(NEW)
称号:異世界人、解読師、道士、異界の顧客
残りステータスポイント:283
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今の自分の確認だ。ただし、ポイントは割り振らない。
肉体と精神の変調が、怖かったからだ。まだ、祖母の魔導具だけでなんとかなる。いや、なっている……か。
異世界のみの生活であれば、こんなことも考えなくて良かったのだろうな。
とりあえず、武装を解除して休もう。
そう考えていた時であった。
『優莉さん! 精霊が向かって来ています!!』
ん? なんだ?
「ここにですか?」
『はい。優莉さんに用があるのでしょう……。 察するに、先ほどの大地の精霊に関係があると思います』
「どんな風に向かって来ていますか?」
『飛んでいます』
そのまま飛び上がり、西の方を向いた。
ログハウス内にいれば、侵入もされることはないだろうが、話も出来ないだろう。僕は、少しだけ西に向かって移動した。まずは話し合いたい。
遠くに何かが見える。そして、徐々に大きくなって行った。西日を背にしているので、黒い影しか分からない。
大きさは、先ほどの大地の精霊と同じくらいだと思う。
そして、徐々にその輪郭がはっきりして来た。
「翼の生えた蛇? いや、あれが龍なのかな?」
そして、それは、僕の前で止まった。
◇
「貴様か! 我が眷属を殺しおって!」
声を出せるんだ。少し感心する。
まあ、そこじゃないのだけど……。
「大地の精霊のことですね。神樹に影響が出そうでしたので排除させて頂きました」
「貴様! 千年の時を生きた貴重な精霊に手をかけるとは!! 人族の分際で身の程を知れ!!」
良く分からない。
知性もなく、僕より弱かった相手に敬意など払えない。
ため息が出た。
それを見た、龍は怒りが頂点に達したようだ。
大きく口を開いてブレスを吐こうとして来た。
直観で分かる。あれは、まともに受けてはならない。
反射で、金縛を龍の下顎にぶつける。龍は口が閉じて、口の中でブレスが爆発した。
だけど、まだ飛んでいるので、生きてはいるのだろう。
『優莉さん、待って!』
サクラさんの制止より早く、僕は動いていた。
乾坤圏を飛ばすと、龍の首が飛んだ。だが、再生しようとしている。
最後は、火尖鎗で焼き払った。
◇
「サクラさん。この精霊は何だったのですか?」
『……霊王の一族ですね。大地の精霊は、霊王に認められれば、進化出来たのです。
優秀な一族を殺されたので、詰問に来たのでしょう』
「殺しにかかって来ましたが?」
『……そうですね。大地の精霊を倒した時点で手遅れだったのかもしれません。私のミスです……』
あれは、止めようがなかったと思うのだけどな……。
「そうなると、水属性の〈根源なる者〉との敵対か。面倒なことになりましたね」
『いえ。霊王は、アンネリーゼさんと同じ巫女の役割を担っています。
水属性の〈根源なる物〉は、神樹に近いです。形は柱であり、湖の底を支えています』
そうなると、霊王は討伐しても良いのか。
水属性の地には、不利益が発生するが、攻めて来るのであれば、迎撃するしかない。
最悪の展開となるが、根源の破壊も視野に入れよう。
「一応聞きますけど、攻めて来そうですか?」
『優未さんの時と同じになりました。戦争は不可避ですね……』
本当に面倒だな。
それと、樹に引っ掛かっていたドロップアイテムを回収する。精霊からもドロップアイテムはあるのだな。
それをマジックバックに入れて、祖母の時の話を聞くことにした。