表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/52

第46話 襲撃1

 月曜日の朝起きると、外は雨であった。嵐と言っても良い。

 スマホニュースを見ると、熱帯低気圧が上陸していると書かれていた。

 また、スマホで地域情報を見ると、川が増水しており、橋は通行止め。

 サイオン製作へ電話を入れて、本日は休みを頂いた。

 まだ出勤日数が少ないので、有給休暇は付与されていない旨の説明を受けたけど、僕はバイトなのだ。

 不満はなかった。


 麗華さんにも、今日は無理に来ないで欲しいと連絡を入れた。

 数分の後に返信が来た。


『分かりました』


 短い文章だったな……。


 さて、今日は、家で大人しくしていなければならない。

 朝食用にストアでお弁当を買い、食べている時であった。


『優莉さん。異世界で、ちょっと困った問題が起きています!』


 サクラさんからの突然の依頼であった。なんだろう?


「内容を教えてください」


『大地の精霊が暴れ始めました。人族の領土に被害が出始めています!』


 精霊……。レオンさんに聞いたな。西の湖に霊王がいるとか。

 祖母の武器であれば、僕でも対処出来るとも聞いた。


「助けに行った方が良いですか?」


『……決めるのは、優莉さんですが、このまま放置すると神樹にも影響が出そうです。

 助けたい人はいないのかもしれませんが、お願いしたいです!』


 行かない理由はないな。

 食事を手早く終わらせて、雨の中外に出る。桜の樹を触ってログハウスへ移動した。





 何時もの武器防具を装備した時であった。


『乾坤弓と震天箭、それと壁に掛けられている槍を持って行ってください! 今日は今までとはレベルが違います!』


 弓と矢は久々だ。余りの威力に敬遠していたのだが、今日は必要なのか。

 それと、あの目立っていた槍か……。余りにも怖い造形だったので手に取らなかった。

 恐る恐る手に取ってみる。重さはそれほどでもないな。

 一応、他の槍で素振りはしていたので、使えそうではあるけど。


 乾坤圏と金縛を九竜神火軍と同じく、腰紐に固定して弓と矢を両手に持った。

 槍は背負っている。それと、陰陽剣も腰に佩いた。


 正直、武器が多すぎる気がする。手は二本しかない。

 マジックバックに入れると、咄嗟には使えないので装備していなければならないのだが、全身武器だらけである。

 念動力(テレキネシス)で操作可能な武器も多いので使う分には問題ないが、他人から見たら、今の状況はどうなのだろうか?

 全身刃物だらけである……。


『急いでください!』


 結構、緊急事態なのだな。

 僕は飛び上がり、急いでサクラさんの指示する方向へ飛んで向かうことにした。





 ダルクの街を越えて、人族の領土の奥地へ。ここまで来たのは始めてである。 

 上空より遠くを見ているのだが、土煙が見えた。まだまだ距離があると言うのにだ。

 そして、それを視認した。


「サクラさん。あれが大地の精霊ですか?」


『はい! 大地が枯れたので養分を求めて神樹に向かっています!』


 巨大怪獣くらいの大きさがあるのだが……。あんな者がこの世界に住んでいるのか。

 他の街は素通りして、そのまま土煙の場所まで直進した。

 近づくにつれて、その大きさに驚かされる。

 ダルクの街の城壁など、簡単に乗り越えられそうなくらいの巨体であった。

 そして、精霊の向かう先には、城塞都市があった。その中心には、神樹がある。神樹は、ダルクの街よりもかなり大きい。

 多分、王都になるのであろう。

 人族を見ると、我先にと逃げ出していた。

 まあ、あの精霊の巨体からすれば、防衛は不可能だろうな。

 人と蟻くらいの体格差があるのである。妥当な判断か。


「頭を吹き飛ばせば良いですか?」


『あの精霊は、大地に触れている時点でほぼ無敵です。回復し続けられると考えてください。

 まずは、動きを止めるために、矢を放ってください。その後に、投槍して、地面に突き刺せば止められます!』


 今まで戦って来た魔物とは、レベルが違うな。

 とりあえず、指示に従う。 乾坤弓に震天箭をつがえて撃つ。精霊の頭に矢が当たると、大爆発を起こして止まった。

 ただし、即座に修復が始まる。

 僕が見た限りだが、精霊の体と言うのは、液体で構成されているみたいだ。臓器などは見当たらない。

 もしかすると、魔素の塊なのかもしれないな。


『急いで!』


 サクラさんに促されて、槍を抜く。

 力を込めると、槍から炎が上がった。そして、魔物の直上から投槍した。魔物の体が、再度爆散する。

 槍は地面に刺さると、周囲を炎で包んだ。

 炎の範囲は、魔物を飲み込むほど広範囲だ。


「槍は、震天箭以上の威力ですね……」


『その槍は、〈火尖鎗〉と言います。炎の槍ですね。貫いた物を焼くのですが、投槍すると広範囲を焼くことが出来ます』


 祖母は、ここまでの威力が必要だったのか……。

 精霊、いや霊王との対立は避けたいと思えた。

 その後、大地の精霊の状態を観察する。

 炎に阻まれて、大地から魔素を吸収出来ないみたいだ。回復出来ずに、その体を崩して行った。

 そして、消滅してしまった……。

 僕は、震天箭と火尖鎗を手元に戻す。火尖鎗をテレポート機能で手元に戻すと、大地の炎も消える。

 性能として破格すぎるな……。


 王都と思われる城塞都市は、何か騒いでいるが、アンネリーゼさんのこともある。僕は、王族にあまり良い印象を持っていない。

 少し考えたが、僕は誰とも会わずにその場を後にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ