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第40話 魔物を統べる者2

 思考を加速させる。

 まず、レベルが違う。逃げられない……。

 戦闘しても、瞬殺だろう。祖母の魔導具でさえ通じないと感じる。


 ……帰還石を使うしか生き延びる道はないが、今は両手が塞がっている。

 それに空中だ。身を隠す場所がない。


 ……詰んでいる。死地に足を踏み込んでいたか。

 せめて、アンネリーゼさんだけでも逃がしたいが、方法が思い浮かばない。

 九竜神火罩で閉じ込める……か? 極小だが、掛けてみるか? 数秒は稼げるだろう。


「ああ。警戒しなくても良いぞ。こちらには戦闘の意思はない。

 それよりも、何処かで座って話さないか?」


 ……選択の余地はないな。


「助かります。この娘が話を聞きたいそうなので、連れて来ただけなんです」


「うむ。俺も同じだ」


 目の前の存在と、アンネリーゼさんは笑顔で頷き合った。

 僕だけが、現状を理解していない……。


 街から少し離れた、砦……いや、物見台みたいなところで、テーブルと椅子を用意して貰った。

 目の前の存在は、天使のような翼を背中に仕舞った。これで完全な人型である。


 三人でテーブルを囲む。

 そして、飲み物が出て来た。

 驚いてしまう。珈琲だったのだ。精製された白い砂糖まである。

 ちなみに運んで来たのは、オーガであった。だけど、きちんと服装を整えており知性を感じさせる。清潔感も感じさせる服装であった。

 僕が異世界初日に討伐したオーガよりもよっぽど強そうである。こんな魔物もいたのか……。


「飲んでくれ。苦労して品種改良したんだけど、俺以外に評価出来る奴がいなくてな。楽しみにしていたんだ」


「僕が誰だか、知っているのですね……」


「ユーミの孫の異世界転移者だろう? しかも、往復可能という破格の待遇持ち。

 〈根源なる者〉達には、知れ渡っているぞ?」


 そうなのか? 僕は監視されている?


「二階堂優莉と言います。祖母の壱岐優未の想いを受け取って、この世界で活動させて貰っています」


「うむ。〈根源なる者〉の一人、レオンだ。種族は、今は進化してフェンリルになる。

 昔、ユーミに撃退されてな。それからは大森林の奥で街を築いて過ごしていた」


 祖母が戦った相手か。やはり、撃ち漏らしていたのか?

 そうなると、僕も戦う必要があるのか?

 いや……、単純すぎる気がする。


「ああ、勘違いしないでくれ。もう争う気はない。

 〈恩恵〉はなくても、十分な生活を送れるようになったのでな。

 人族の真似をして、街を作ったのだが、なかなかに快適に過ごしている」


 ここで。珈琲を一口飲んだ。問題ないどころか美味しいとさえ感じる。


「……美味しいですね。香りも良い。僕の元の世界と何ら遜色ない味です」


「本当か? それは良かった。結構自信作だったんだ。三十年かけて作った甲斐があったよ」


「……苦いです」


 ここで、アンネリーゼさんが、普通の感想を出した。

 砂糖とミルクを混ぜて、まろやかにして飲ませると、飲んでくれた。

 ただし、慣れるまでは時間がかかりそうだ。


「さて、本題に入ろうか。この世界には〈根源〉を司る者が五体いる。

 神樹と俺、それ以外に三体だ。分かりやすく言うと、火風水土金だな。

 神樹が風属性に当たり、俺が金属性に当たる」


『サクラさん。この話は合っていますか?』


『……私も知らなかった内容です』


 サクラさんは動けないから、この情報は持っていないのか。

 それにしても、世界規模の話になりそうだ。


「それでだな。ユーミが色々な知識をこの世界に残してくれた。

 俺は、それを真似て街を作った。

 争わなくても良いようにはなって来ているのだが、まだまだ先の話だ。

 俺もこの大森林を、完全には掌握しきれていない。

 神樹の近くに魔物が出るだろう? 全ての魔物を統率することは、今のところ出来ていないんだ」


 魔物の統率……。


「僕の知識になりますが、魔王様に当たるのですか?」


「うむ。名乗ってはいないが、魔物の王になる予定だ。

 だが、魔物の上位種は、まだ数多くいる。魔王を名乗るのは当分先になるだろうな」


「〈根源なる者〉に逆らう者が、いるのですか?」


「……昔の話になるが、神樹を人族の手で切り倒したこともあるのだぞ?」


 この辺は良く分からいないな。〈恩恵〉を調べてみるか。


「それで、その娘だ。なかなかに面白い。どうだろうか? 俺の国で保護したいのだが」


 意外な提案だな。今日は様子を見に来ただけだったのだが。


「私からもお願いします。身を寄せるところがなくて困っていました」


 勝手に話が進んで行く……。

 でも、こうなるように誘導されたのかもしれないな。


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