第20話 城塞都市ダルク3
空を飛びながら、仮面を外した。
「あ~! 緊張した!!」
もう、汗だくである。
『うふふ。おつかれさまでした。上出来だったと思いますよ』
「いくら力を手に入れたからって、目立つ行動は、僕には不向きですね。
結局は、祖母の名前を使っているし」
『まあ、まあ。力持つ者の責務ということで』
「楽しんでます? サクラさんに誘導された感じが半端ないんですが……」
『この世界のためになることをしてくれたのですから、嬉しいですよ』
ため息が出た。
◇
ログハウスに戻って来た。どうやら、空を飛ぶ魔物は、大森林にはいなさそうだ。
まあ、油断はしないけどね。
「ただいま。モニカさん」
「お帰りなさい。ユーリさん……。何処に行っていたのですか?」
「ダルクまで、ちょっと。それでなんですけど、計画を変更しました。領主を追い出してきました」
「はい?」
事の詳細をモニカさんに話す。
モニカさんは、眼が点になっていた。
まあ、そうなるか。魔法が使える世界みたいだが、城壁を簡単に吹き飛ばせる威力が出せるのであれば、城壁を作る意味はない。
空を飛ぶ技術も、まだ開発されていないのであろう。
唯一の懸念は、転移魔法かな? あるのかどうかも知らないけど。
「え~と……。これからどうなるのでしょうか?」
「僕と一緒に、ダルクに帰って貰います。一応、モニカさんの依頼を受けて、優未の孫が手を貸したと言う噂を流して貰います。
困ったことがあったら、連絡をください。手を貸しますので。
連絡手段は、神樹で祈りを捧げてください。すぐに向かうとは言えませんが、二~三日以内には、向かうようにします。
そうですね。僕と繋がりがあると言ってくれれば、訴追されることもないでしょう」
モニカさんは、思考が追いついていないようだ。
茶番も良いとこだ。もう少し、知力を上げた方が良いかもしれないな。
でも、これでモニカさんを迫害する人はいなくなるだろう。
少し、苦笑いが出た。
「それと、領主の娘に面識はありますか? もしくは、領主の屋敷で働いていた女性かな?」
「え……あ。えっと……。領主の娘がシノンと言うのですが、彼女は誰とも気軽に接してくれていて……。友人とは言えませんが、親しい間柄でした」
あれ? 話がややこしくなって来たな。
「仮に捕まったら、擁護してくれていました?」
「どうでしょうか……。魔物対策で武装して、大森林で採集していたと説明したのですが、信じて貰えなかったので……。
彼女は領主の娘というだけで、何の権限もないですし……」
悪者を追い出して、皆笑顔とはならないか。
次にどんな領主が来るかも分からないしな。
「シノンさんが領主になれば、不満は収まると思いますか?」
モニカさんは、首を横に振った。
「そもそも、産業があれば良かったのですが、作物が病気で枯れてしまい食糧不足が起きてしまいました。
それ以前から、領主は無理難題を課して来ていたので、半分の領民が土地を捨てました……。
でも、シノンさんが間を取り持ってくれていて、なんとか持っていましたが、限界が来ました。
それで、大森林で襲撃して、領主の交代を……」
物騒な話だな。でも追いつめられたらそういう行動にも出るか。
シノンさんを人質にすることも考えたのだろうが、それを行わなかったことを考えると、人望のある人だったようだ。
まあ、もうダルクには戻れないと思うので、考えてもしょうがないか。
「僕が手伝えるのは、ここまでですね。新しい領主に期待しましょう」
『無責任な人!』
う……。サクラさんからの突然の突っ込み。
『もう出来ることもないと思うのですが……』
『優未さんは、街どころか国を救いましたよ! 作物の病気くらいストアで薬品を買えば良いじゃないですか。
いえ、元の世界の農薬でも持ち込めば、解決出来るでしょうに!』
そこまでするの……。
う~ん、ガリガリと頭を掻く。
日本円は使いたくないな……。ストアを見るか。
薬品の項目をタップして、スクロールして行く。
気になる物を見つけた。
・万農薬:千ゴールド
もじってない?
◇
モニカさんを抱えて空を飛び、再び城塞都市ダルクへ。
説明は、モニカさんにお願いする。
僕は、仮面を被っていなかったらこんなに多くの目線に耐えられなかったであろう。
そして、一通り説明が終わったら『万農薬』をストアから買ってモニカさんに渡した。
歓声が上がる。
それはそうか。彼らからすれば、何もない空中からいきなり物質が現れたのだからな。
この時点で、僕が祖母の孫だと疑う人はいかなった。
ちなみに『万農薬』の説明はこんな感じ。
・万農薬……土地に撒いてから十年間は、農作物には悪影響が出ない。害虫、病害を寄せ付けない。
さて、必要量を聞いてストアで買わないとな。
その前に、魔物を狩って素材を換金するところからか……。