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第18話 城塞都市ダルク1

 朝になったので、顔を洗い、身支度を整えて桜の樹に触れた。ログハウスに移動したのだ。

 もう、異世界転移が日常化し始めている。

 モニカさんを探すと、朝食を作っていた。


「おはようございます。モニカさん」


「あ、おはようございます。ユーリさん。昨晩はどちらに行かれていたのですか?」


 どうしようか。隠しても仕方がないか。


「異世界に家を持っているので、行き来しています。いや、こちらが異世界ですね。元の世界と言った方が良いでしょう」


「はい?」


 その後、詳細をモニカさんに話した。驚いていたが、スマホを見せたら信じてくれた。

 発電機を持って来て、家電製品を見せるのも面白いかもしれないな。

 その後、朝食をとり、僕は元の世界に戻った。

 朝食は、焼いた薄いパンに肉と野菜を挟んだサンドイッチであった。

 味的には問題ないな。調味料があるからなのかもしれないけど。





 今日は、家電を買いたいので、家電量販店に行く。


 オーガの鎖で得た資金だが、まだ余裕はある。今のうちに必要な物を揃えておきたい。

 でもバイトはどうしようか……。

 収入源の確保が、僕の一番の命題だが、この数日何もしていない。いい加減にハローワークに行かないとな。

 そんなことを考えて、家電量販店に着いた。

 僕には、家電の良し悪しは分からない。

 サクラさんに言われるがまま、炊飯器と電子レンジ、そして冷蔵庫、洗濯機を購入した。おまけで電気ケトルを付けてくれた。今までは、ヤカンでお湯を沸かしていたので楽になると思う。

 時期的に独り暮らし用のセット物でも良かったのだが、サクラさんは、『長く使うものなので良い物を買いましょう』とのことだった。特に不満もない。即金で支払いを済ませると、すぐに輸送してくれるとのことだった。

 トラックに乗せて貰い、そのまま家路に着いた。

 冷蔵庫は運んで貰い、設置までしてくれた。ただし、電源を入れるのは、三時間後にして欲しいとのことだ。この辺は良く分らない。何かを安定させる必要があるらしい。まあ良いや。今は、食材もないし。夕方にでも冷蔵庫の電源を入れよう。

 午前中でやることが終わってしまった。

 昨日のパエリアの残りを食べる。食べながら考えた。


『サクラさん。異世界の通貨はどんな単位ですか?』


『単位は〈ギル〉ですね。紙幣はなく、硬貨を使用していますよ』


『ストアで買えますか?』


『現実的ではないですね。貴金属のインゴットに変えて売った方が良いでしょう。もしくは、魔石を売っても良いですね』


 魔石……あれか、魔物を倒した時に出てくる石か。多少は持っている。

 ……モニカさんには、お金を渡して他の街に移って貰うか。その間に、あの街の問題を解決して、最後に戻って来て貰おう。

 家はあるのだろうか? 財産とか置いて来てしまったのかな……。





 ログハウスに移り、モニカさんに今後の方針を説明した。

 モニカさんは暗い表情となり、俯いてしまった。だけど、彼女に選択肢はない。

 最終的には頷いてくれた。

 何処かに頼れる親戚とかいないかと聞いたら、かなり遠い街を指定して来た。海に面した小さな町であり、神樹もなく、平和な街なのだそうだ。母方の実家があるらしい。


 予定としては、出発は明日の夜明け前にして、まず城塞都市ダルクで換金して馬を買う。その後、二人で移動すれば良いだろう。

 他の街に着いたら、乗合馬車で移動出来るとのことだ。

 魔石の換金は、ギルドと呼ばれる場所が良いらしいが、身分証がないので、安くなるが露店の方が速いと言われた。

 足元を見られかねないので、魔石ごとの大体の値段を教えて貰う。

 ちなみに魔石は、魔法の燃料になるのだそうだ。魔法を覚えたい気もするけど、欲張り過ぎだな。

 今は、祖母の魔導具の練習に時間を割いた方が良いだろう。


 服装は、八卦衣であれば、問題ないそうだ。和服にブーツでも怪しまれないのだろうか? モニカさんの靴を見ると、革製であった。この十年で変わったのだそうだ。草履とかの方が、今は怪しいとのこと。

 とりあえず、明日の準備をすると言うことで分かれた。

 明日の夜明け前にまた来ると言って、ログハウスを後にする。





 祖母の家に戻って来た。


「ふぅ~」


『……甲斐性のない人ですね。見損ないました』


「な!?」


 サクラさんから突然言われた。


「そうは言っても、ログハウスに住まわせることも出来ないし……」


『良いじゃないですか、住まわせても! モニカさんは、優莉さんを頼って大森林に逃げ込んだのですよ。お金を渡すので出て行ってくれは、ないと思います!』


 そう見えるのかな……。

 少し考える。


「サクラさん。領主を失脚させる方法は、何がありますか?」


『……領地に多大な損害を出せば、すぐに失脚するんじゃないですか? 例えば、城壁を壊されるとか。魔物に領土を蹂躙されるとか。領民の反乱とか』


 ……ふむ。


「領主は、なぜ大森林に馬車で赴いたのか分かりますか?」


『あの道は、隣街と繋がっているのです。いえ、隣の神樹と言った方が良いでしょう。モニカさん達は、打ち合わせに行くところを襲撃しようとしたのでしょうね』


「魔物除けのお香は、どれくらい効果ありますか?」


『優未さんが作ったのですが、もう三十年くらい街への襲撃はありませんよ?』


 余り考える時間は取れないな。

 決断は早い方が良い。……行くか。


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