第16話 異世界の再会1
「どちらの学校に通われているのですか?」
「近くの国立大学です。四月から二年になります」
年上だったか。
正直、西園寺麗華さんの年齢は、見た目で分からない。綺麗な化粧と決まっているヘアセット。高価そうな服とアクセサリー。年下とも年上とも取れる。
でも、これで『高校生ですか?』はないか。
その後、一時間程度、雑談して帰って貰った。
「ふぅ~」
気が抜けた。僕にしては、良く話が続いたと思える。
『うふふ。随分と気に入られていましたね~』
サクラさんは下世話だな。無視無視。
戸締りをして、一息付いた。
ここで気が付いた。
「夕飯の食材が何もない……」
またコンビニに行くか? だが、このままでは、コンビニ飯から逃げられなくなりそうである。
自炊しなければ……。
スーパーはまだ開いているだろう。食材を買いに行くか。
立ち上がった時であった。
『ストアは使わないのですか?』
一瞬頭が真っ白になった。こっちの世界でもストアは使えるの?
ステータス画面を思い浮かべる。
目の前に、ステータス画面が浮かび上がった。
「……まじ?」
◇
まず、米十キログラムを購入した。
異世界の米……。味が心配だが、おにぎりやお弁当は大丈夫だったのだ。食べられるだろう。
それと、一人前の野菜と魚介類を購入。それと、調味料各種も。
炊飯器がないので、フライパンで米を炊かなければならない。
今日は、パエリアにすることにした。
家庭科の授業は真面目に受けていたので、簡単な物は作れる。まあ、一人でグループ全員分の食事を用意させられていただけだけど。
手早く調理を済ませて、味見をしてみた。
「異界の食材でも、味には問題ないのだな……」
とても美味しく調理出来た。少し残して、明日の朝食に回す。
明日は、家電を買いに行こう。炊飯器と電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機は欲しい。
歯を磨いて、スマホのニュースを確認して寝ようとした時であった。
『少し良いですか?』
「ん? なんでしょう?」
『今日助けたあの子が、また大森林に一人で入って来ました。怪我をしているので逃げて来たのでしょう。助けに行きますか?』
「え!?」
◇
急いで着替えて、武器防具を揃える。
夜間は、魔物が動かなくなるとはいえ、こんな森に女性一人は危険だ。
「サクラさん。モニカさんの状況を教えてください!」
『……左腕を切られていますね。逃げて来たのでしょう。それと、優莉さんを頼って大森林に入って来たのだと思いますよ?』
……。自分が出せる最高速度で森を進んで行く。フリーランニングだ。方角は、サクラさんが指示してくれるので、迷うことはない。
体感時間で一時間くらいだろうか。モニカさんの場所に着いた。
無駄な戦闘がなくて本当に助かった。
「はぁ、はぁ……」
「……ユーリさん」
良かった。モニカさんは無事だった。気が抜けたのか、僕はその場に尻もちをついた。
『感動の再会のところ悪いのですが、追手が迫っていますよ~』
っぐ! ストアからポーションを購入して、モニカさんの左腕にかける。出血が止まった。
そのまま、お姫様抱っこ!
急いでその場を後にした。
◇
「はぁ、はぁ……。ここまで来れば、追手も撒けたでしょう……」
大森林の真ん中……。ログハウスまでは、まだ距離があるが、その途中で足が止まった。
体力の限界であった。全速力で走るとスタミナが切れるのだな。こうなると、ステータスの極振りは問題があるかもしれない。
筋力・体力・速度は、バランス良く上げた方が良いかもしれないな。
他の項目が付いて来ないと、最大のパフォーマンスは得られないだろう。
そんなことを考えながら、モニカさんを降ろして、一度休憩を取る。
『サクラさん。追手はどうなっていますか?』
『まだ、大森林で探していますが、距離は大分あるので大丈夫でしょう。モニカさんには、追跡魔法も掛けられていませんね』
『ログハウスに連れて帰っても大丈夫でしょうか?』
『優莉さん次第ですね。優莉さんが許可すれば入れます。でも良いのですか。そんな若い子を連れ込んで~』
赤面してしまう。
そうだ、何も考えていなかった。
モニカさんを見ると、赤面しながら両手で体を守っていた。
咄嗟のこととはいえ、抱えてしまったのだ。
僕なんかに触られるのは、非常時とはいえ嫌だっただろう。