【短編】願いの叶う電話ボックス【ホラー】
噂、都市伝説ブームなどが起きた2000年代初頭の話。
その日、県立東森高校に通う女子高生サヤは、友人と噂話で盛り上がっていた。
「ねぇ知ってる?東森町の5丁目の商店街の路地裏の奥に、電話ボックスが1つあるんだけど-」
サヤの友人のヒナがこう切り出した。
「その電話ボックスって、1万円札が入る特殊な仕様になってて、そこに午前6時丁度に1万円札入れて自分の携帯に
電話をして願い事を言うの。そうすると、願い事がなんでも叶うんだって。」
よくある噂話に都市伝説の一つだったけど、サヤはその話に食いついた。彼女は今、藁にもすがる願いを
持っていた。同じクラスにいる、シンタロウに恋をしていた。しかしシンタロウは振り向いてくれない。
どうしてもこの恋愛を成就させたかった。
「私、行く。」サヤはそう言った。
同じく話を聞いていた友達のアヤカは「あんた、よっぽどシンタロウと結ばれたいんだね・・・」と半ば
ため息混じりに呟いた。
翌朝午前6時、東森5丁目にサヤの姿があった。半信半疑ながら5丁目の商店街を奥に進むと、コンビニとラーメン屋の間に
路地裏につながる道を見つけた。人一人進めるかどうか薄暗い道を行く。奥まで進むと空き地なった土地がポツンとあった。
周りを見渡しても電話ボックスなどない。
「なんだ、やっぱりただの噂か・・・そうだよね。そんな話ないよね。」ここまで来たのに残念な気持ちで帰ろうと路地裏を抜けると
コンビニの横に電話ボックスがあるのが視界に飛び込んだ。
これはコンビニの電話ボックスだよねと、なんの毛無しに電話ボックスのドアを開けてみた。
「え・・・。」
その電話ボックスは黄緑色ではなく、真っ黒な電話だった。1面真っ黒の電話ボックス。異様なものだった。
硬貨を入れる入口の下に「1万円挿入専用」と書かれたお札を入れる挿入口があった。
サヤは恐る恐る1万円札を入れた。そして自分の携帯電話に電話をする。
「~~~♫」
自分の携帯の着メロがけたたましく鳴った。サヤはそれを聞いて、受話器越しに叫んだ。
「シンタロウと付き合いたい!!絶対彼氏にしたい!!!!!!お願いします!!!!!」
呼び出し音が鳴る受話器に向かってサヤは思いを伝えた。
「プツン。ツーツーツー」
電話は勝手に切れた。サヤは汗だくになりながら帰路に着いた。本当にあった。本当に。
これでシンタロウと結ばれる-
息を切らしながら帰る途中、横断歩道に差し掛かったサヤは大型トラックと接触し、即死した。
その日、高校でサヤの死が告げられた。ヒナとアヤカが話をしている。
「あの噂、信じて行ったんだね、サヤ。」アヤカは泣いている。
「あの話、続きがあって、電話が途中で切れると、願いが叶うどころか、死んでしまうってことサヤに言うの忘れてた・・・私のせいだ。」
ヒナも大号泣している。
悲しいニュースが包まれる高校を後にしたヒナは、放課後の帰り道、ふぅとため息をつき。微笑んだ。そして、視線の先には
シンタロウがいた。
二人は手を繋いで歩き出した。
3日前
ヒナは噂の電話ボックスにいた。
1万円札を入れ、
「サヤ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。シンタロウは私のものなの。サヤは死ね。」その時、
電話ボックスの電話は切れることなく呼び出し音を鳴らし続けていた。