違います。祖母と孫です!!と言えたらいいのに。
「んまぁーー!お似合いですわぁ!!」
見え見えの媚びを売りながらそう叫んだのは、サミュエルが連れてきてくれた服屋の店員さんだ。
最初は普通の対応をしていた彼女達だったけれど、サミュエルが言った「彼女に似合うものを全て」という台詞に目の色を変えて次から次へと服を持ってきては試着させて、あれもこれもと山積みにしていく。
「お……優里亜、とりあえず既製品で我慢してね」
「そんなに、必要ないわよ?」
「俺が優里亜の着飾った姿を見たいの」
!この子ったらいつの間にこんなことをスムーズに言えるようになったのかしら……
ウィンクをしながら言われた言葉に、頬が赤くなるのを感じる。
「素敵ですわねぇ。恋人ですか?」
「え……」
「そうだよ」
ほぉと見惚れるように聞かれた店員さんの言葉に、戸惑っているとサミュエルが言葉を返した。
「婚約者なんだ。ね、優里亜」
「え……ええ」
「まあ!やっぱり!!」
ニコニコと有無を言わさぬ様子のサミュエルに戸惑いながら返事をすると、店員さんは弾んだ声で「彼を誘惑できるような、素敵な服を探しますわね!」とさらにやる気になったようだ。
「ああ、それと君」
「はい?」
「この服は着て帰りたいから、先に直してくれないか?」
「!!はぁーい!わかりましたぁ!!!」
日本の既製品とは違い、ここの既製品は少しサイズを大きめに作られており、このままだとダボダボなので客の形に合わせて直しという作業を経て渡される。
基本的には、2・3日かけて行う作業なのだが、サミュエルは店員さんに幾らかの渡して融通をきかせたようだった。
「サミュ……」
「いく前も言ったけど、あの服だと困るからね」
私が咎めようとしたのに気付いたのか、私の唇に人差し指を置くと笑った。
な、な、なんなの?
どこか色気のある仕草にドギマギしながら、サミュエルが選んだ服に袖を通す。
真っ黒ではないが黒を主体としたシンプルなドレス。
あれ程たくさんの色とりどりのドレスの中で選んだのがこれって……
少し、サミュエルのセンスを疑ってしまうが動きやすいその服は案外着心地が良かった。
その後、靴屋や帽子屋、宝石屋と目が回りそうになりながら、1年はもう何も買わなくていいぐらいの買い物をして私たちは再び馬車へと乗り込んだ。
窓から見える景色は変わらず美しい。
…あれ?行きと違う道??
「サミュエル?」
「疲れてるだろうけど、ごめんね。後1箇所だけ、行きたいところがあるんだ」
疑問に思って振り向いた私に、サミュエルは真剣な顔でそういった。