少し近いのは気のせいかしら?
屋敷から街まではそれなりの距離があり、馬車に乗り込むことになったのはいいのだけど……
ナチュラルに隣同士に座ったサミュエルを見る。
先ほど靴を履いていなかった私に跪いて楽しそうにメイドの靴を履かせたり、今も既に座ったというのに、いまだ嬉しそうに私の手を握っているのはなぜなんだろうか?
それに、正面も空いているのだからわざわざ隣に座る意味がわからない。
「サミュエル、狭くないかしら?」
「全然。むしろ、広いぐらいだよ。もう少し小さい馬車を購入してもいいかもしれない」
「そ、そう……」
キッパリと言われてしまうと文句も言えなくなってしまう。
困ったなぁ……孫とはいえ、あの人によく似てるんだもの。顔が赤くなってしまうわ。
戸惑いを隠すように、顔を背けて窓を見る。
「わぁ……!」
黄金になびく稲穂。ゆっくりと回る風車。
穏やかに稲を刈る人々と生き生きとした馬や牛たち。
変わらない、幼い時から見てきた景色が懐かしくて歓声を上げる。
そんな私の様子をサミュエルは嬉しそうに見ていた。
「もうすぐ着くよ」
「え、もう?」
「はい。おば……いや、優里亜が外に夢中になっている間に着いちゃったんだよ」
ガッタンと馬車が止まる。
馬車の扉が開き、サミュエルが先に降りて私を促してくれる。
「さあ、どうぞ」
「これが、あの街なの?」
建物は煉瓦造りになっており、道は石畳と美しく整備されている。
私がいた頃とは全く違う風景がそこにはあった。
「新しい陛下が一番最初にしたことが道の整備だったんだ。で、そこに街が新たに作られたの」
「そ、そうなの」
「綺麗でしょう?」
「ええ」
幼い頃のサミュエルが知っていることを話してくれる時と変わらぬ笑みでいうのがおかしくてくすりと笑ってしまう。
「さあ、服屋はこっちだよ!」
「待ってちょうだい」
サミュエルに引っ張られ、歩き慣れた平な道じゃない、でこぼことした地面に足を取られる。
バランスを崩しかけたのをサミュエルがさっと庇ってくれた。
「ごめん、優里亜と一緒に歩けるのが嬉しくて……つい」
「いいえ、大丈夫。でも、ゆっくり歩いてもらえるかしら?」
「うん!!」
しょぼんと落ち込んだ様子のサミュエルが可愛くて、お願いすると彼は嬉しそうに再び歩き始めた。