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相性のいい異性を召喚する魔法陣、ですか?

しばらく抱きしめ合っていた私達だったけれど、このままではいけないと我に帰った。

サミュエルの腕の中から逃れようとする私に、彼は離れると「どうしたの?」と不満げに尋ねる。


「大事なことを忘れていたわ。どうして私は此処にいるの?」

「お祖母様が此処にいる理由……そうだ!魔法陣っ!!」


サミュエルもハッと我に帰ったようで、慌てた様子で魔法陣を調べ始めた。

そして……


「駄目だ。大事な一部が消えてる……」

「サミュエル、その魔法陣はいったいなんなの?」

「実は、王家から内密の依頼があってね……」


サミュエルが言うには、貴族達が国の何たるかを学ぶ国立学園である革命が起きたらしい。

それは、恋愛結婚!

サミュエルが中等部に通っていた時のこと……高等部のダンスパーティーで今までは親が決め、家の為の結婚をしてきたがそれは間違っていると王族の皇太子が大々的に告げたのだと言う。

そして皇太子は、自身の想い人である子爵家の令嬢の腰に手を当てて自身の婚約者に婚約を破棄するよう迫り、陛下や皇太后を説得し、見事に自由恋愛による婚約を成立させた。

それにより、現在は自由恋愛による結婚が流行っている……と。

日本の小説のような話だ。陛下や皇太后まで認めてしまうほどの熱意が、その皇太子にはあったのだろう……

で、問題はそこからだ。

皇太子の婚約を境に、婚約破棄や離婚の数が急上昇。

家の為と想いを殺していた人が多かったらしい。

けれども、恋愛結婚といっても出会い自体が限られている貴族にとって、学園中に恋人が出来なかった者の結婚はほぼゼロになってしまった。

このままでは、困ると魔法陣研究をしていたサミュエルに白羽の矢が当たったのだという。


「これは、相性のいい人物を召喚するための魔法陣だったんだ……」

「そ、そうだったの……」

「でも、見て、此処。場所を固定させるための文字だったんだけど、そこが歪んでいる。多分、お祖母様が此処にきたのはそれが原因だね」

「……帰れるの?」

「ごめん。わからない。なんの文字を刻んていたのか、一部が消えてしまっていて見当もつかない。そもそも、本来ならまだ召喚できるはずもないんだ……魔法陣の暴走としか考えられない」

「そんな……」

「ごめんね、お祖母様」


相性の良い人物……そんな都合の良い魔法陣作れるのかしら?若い子の考えることって謎だわ。

そんな風に思いながらも、魔法陣を見ると、確かに何かしらの文字の部分が歪み、消えてしまっていた。

帰れないと聞いて1番に浮かんできたのは両親の顔だった。

サミュエルに会えた事は嬉しい。

泣いていたこの子のことは、とても気になっていたから。

でも、ユリアとしての生は終えたのだ。

今の私は優里亜。

日本で生まれ、あの優しい両親に育てられた別の私……

もう、会えないの?

悲しみに瞳に涙が溜まり、謝るサミュエルを責めたい気持ちが溢れ出してきて……


「お母さん、お父さんっ!!」


行き場を無くした子どものように泣きじゃくることしかできなかった。

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