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元の世界に戻ってしまったようです。

ところで、とある都市伝説を知っているだろうか。

六芒星の真ん中に「飽きた」と書いた紙を寝る前に握って眠ると異世界に行くというアレである。

どうして私がそんな話をしているかというと、朝起きたら自室の部屋ではなく魔法陣の上だったからだ。

目をパチクリさせて辺りを見渡すと1人の男性が呆然とした様子で立ち尽くしていた。


「誘拐犯……?」

「ち、違う!!!」


指を指して問うと顔を赤らめ、激しく首を振って否定する男性。

その隙に魔法陣から出て、窓を開けると広大な草原に美しい朝日が登る瞬間だった。

生前、大好きだった……懐かしい光景。


「ここは……カーター家なのですか……?」


確信はないのに、声が震え、胸が熱くなり目から涙が溢れてくる。


「そうだが……なぜ知っている?」


警戒したような男性の言葉に振り向く。なぜか、たじろぐ男性に首を傾げながらよく見ると前世での夫にそっくり。

それに、髪はフォルクに、瞳はスティカによく似ている。


『おばあさま』


ふと、男性にあの子の面影を感じ、頬に手を伸ばす。


「ーー貴方、まさかサミュエル……?」

「!なぜ、俺の名前を知っている!!!」

「きゃっ!!」


伸ばした手を掴まれ、動けないように拘束され、私は小さな悲鳴をあげた。


「答えろ!」

「……言っても、信じてはもらえないでしょう」

「何?」


生まれ変わりだなんて、そんな非現実的なこと信じてもらえるはずがない。

それよりもーー


「それよりも、この魔法陣はいったいなんなのですか?なぜ、私は此処にいるのです?」


そう、異世界である日本から私を呼んだこれはいったいなんなのか。

何が目的なのか。

もし、もし、彼が本当にサミュエルならば、私は何か力になれるだろうか?


「これは、その……いや、それよりも、先に俺の質問に答えろ。なぜ、ここがカーター家だとわかり、俺の名前を知っている」

「……良いでしょう。本当のことを話すわ。まずは拘束を解いてちょうだい」

「言ってからだ」

「私は、以前この家の女主人だったわ」

「何を言っている」

「名前はユリア・マルクス・カーター。貴方の、祖母よ」


覚悟を決めて、告げた言葉に、サミュエルは明らかに動揺した。


「嘘だ!お祖母様は、俺の目の前で息を引き取った!!お前はいったい何者だ」

「そう、ユリア・マルクス・カーターは、家族に見守られたがら死んだわ。本当に幸せだった。そして、私、優里亜として生まれ変わったの。此処ではない、世界で……」

「そんな、馬鹿な……」

「ねぇ、この魔法陣はいったいなんなの?なぜ、私はこの世界に戻ってきてしまったの?」


拘束されながら、サミュエルに問いかける私の腕は、彼はそっと外した。

そして、私の肩を両手で掴み、真剣な表情で問うた。


「お前が、お婆様だというのなら、僕との思い出を言えるはずだ。お祖母様と僕が交わした約束を……!」

「お、覚えているわ。あれは、サミュエルの懐いていたメイドが結婚した時のこと。別れを嘆いた貴方は、私に、お祖母様はどこにも行かないでと抱きついて約束をしたの。貴方を置いて、どこかに行ったりしないと」

「!!そうだ。なのに、どうして置いていったの?」


姿はすっかり大人なのに眉を顰め今にも泣き出しそうな顔に、どうしても幼い頃の彼の姿を思い出してしまう。

それに、幼い時の口調に戻ってしまったサミュエルの瞳の中の私も、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「ごめんなさい……ずっと謝りたかった。私はひどいお祖母様ね」

「本当に、本当に、お祖母様なんだね……」

「ええ」


彼の腰に手を伸ばすと、彼はそっと私を抱きしめた。


「お祖母様。お祖母様……」

「サミュエル……」


抱きしめ合いながら、私と彼はしばらく再開を喜びあったのだった。


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