日本人に生まれ変わりました。
前世を思い出したのは、私の8歳の誕生日のことだった。
バースデーケーキの蝋燭の火を吹き飛ばした瞬間、走馬灯のように前世の記憶が頭の中をよぎったのだ。
その時は、最期の時を思い出した所為で当時の想いが溢れ出し、耐えきれず泣き出してしまった程だ。
先ほどまで笑っていた私が泣き出したとなれば、当然そばにいた母や父は驚きながら慰めてくれた。
ちなみに、その時の出来事は感激のあまり泣き出したという事になっており、今でも私の誕生日が来るたびに語られる笑い話となった。
まあ、その後、高熱を出して入院したというオチまでしっかりつくのだけど……
「あの時からなんだか大人びてちゃんということを聞いてくれる良い子になったのよねぇ」
「そういえば、そうだな。やんちゃばかりしていたのに、本も読むようになって……別人みたいだったよな」
当時を振り返りながらしみじみと耳にタコが出来るほど両親に言われたことがこれである。
確かに、外遊びが好きだったけれど前世では高額だった本が無料でたくさん読めるんだもの、ありがた過ぎてつい見ちゃってもおかしくないでしょう……しかも、読んだ本が面白くて、本の世界にどっぷりハマるのも仕方ないじゃない!!
後、ゲーム!これも最高!!
前の世界の魔法や妖精等の存在は此方ではファンタジーとして語られており、少し寂しくはある。
けれど、本を捲ると懐かしい世界が広がっていて過去に戻る感覚は誰にもいえない、私だけの秘密だ。
まあ、そんなこんなで、前世の私は成長と共に今の私に馴染み、今ではすっかり日本人である。
さて、なぜそのような話をしているかというと私は本日20歳になり成人を迎え、今まさに、定番の話を聞いている最中だったからだ。
「でも、貴方がちゃんと大人になってくれてよかったわ」
「そうだな。あれ以降、大きな怪我や病気もなく元気に育ってくれた。それだけて十分幸せだ」
「2人とも……ありがとう」
父と母の言葉に胸が熱くなる。
私の方こそ、突然前世の記憶が戻り、今までの常識と昔が混合して変なことを言ったりする娘だったのに此処まで大切に育ててもらって本当に感謝しかないぐらいだ。
まあ、妄想の激しい子って思われてたらしいけれど……
母に、将来は小説家かしらねぇとニコニコ顔で言われた時は、天然?と思ったわ。
父は父で、小説や漫画の話か。面白そうだな!!と全く信じてくれなかったし。
……でも、そんな2人だったからこそ、変な子扱いされることなく育ったんだろうな。
誕生日のお祝いが終わり、自室に戻ると私はベットへと飛び込んだ。
「ーーフォル、スティカ、サミュエル……」
幸せだからこそ、思い出してしまう。前世の家族のことを。
もう2度と会えないとわかっているけれど、私は今も幸せだよ。
そう、心の中で呟いた。