ひまわりの伝言(仮)
短時間で書いたものです。
続きを書くかは検討中です。
主人公の名前を決めかねたので、『私』にしています。
「さぁ、涙を拭いて」
その人は私を暗闇からそっと連れ出してくれた。
外の世界はこんなに明るかっただろうか。
一面のひまわり畑。舗装されてない土道がどこまでも細く続く。
彼は私の手を繋ぎ、当たり前のように話しかけてくる。
その顔は優しく、瞳は黒真珠のように輝いていた。
どれくらい歩いただろうか。後数メートルで、ひまわり畑も終わりを迎えるようだ。
すると彼はピタリと立ち止まり、私をまっすぐ見つめた。
私が不思議そうに彼を見つめ返すと、彼の顔がゆっくりと私に近づき、私の額に優しく口づけた。
そして私に1輪のひまわりを手渡した。
「ありがとう」
そう告げると、彼は去っていった。
彼の後を追いかけようとしたが、ひまわり畑の出口の先は崖だった。
彼はどこに行ったのだろう?
「さとし…さとしー!!」
呼んでも、返事は返ってこない。
私はまた涙を流した。
涙を拭いてくれる相手もいないのに。
私はその場にしゃがみこんだ。そしてまた暗闇へと戻った。
目を覚ますと、いつものベッドで寝ていた。
いつもと違うのは目から知らないうちに流れていた涙だ。
「何で…?」
私は手で涙を拭おうとすると、右手に違和感を覚えた。
手のひらをよく開いてみると、ひまわりの花びらが一片くっついていた。
「夢?…じゃないの?」
私は夢の中の人の名前を呼んだ。
「さとし…あなたは誰……?」
すると、ビューっと荒ただしい音を立てて窓の隙間から風が勢いよく入ってきた。
あっ……!。
そのせいで手のひらにあった花びらが宙に舞い上がった。
そして吸い込まれるように部屋の壁にかかっていた家族写真に張り付いた。
「そこにいるの?そこに行けってこと?」
私はベッドから飛び上がり、着替えると家を出た。
場所はうる覚えだ。でも、そこに行ったら何かがわかる。そして、大事な事を何か気付ける気がした。
誰もいなくなった部屋は急に静かにがらんとしていた。
壁にかかった写真は、今は亡き両親と最後になってしまった家族旅行の写真。
そこには満開のひまわり畑で楽しそうに笑う3人の姿があった。
読んでいただいてありがとうございました。
続きはよく検討してから決めたいと思います。